クヌギの木さんと別れてからどのくらい、ひとりで走り続けていたんだろう。
いつも、周りにはずっとお友達がいたから、ひとりで苦しむことなんてなかった。
だから、
ポプラの木さんの声が聞こえた時、すごくほっとしたんだ。
優しい声が、温もりが、もう大丈夫だって感じさせてくれる。
これでもう、わたしはひとりじゃない。
そんな風に安心したら、今までの疲れが出てきた。
ポプラの木さんの大きな洞に入り込んで、疲れた足をほぐす。
と、その時、
いつもより低いポプラの木さんの声がして、外を見る。
そこに、見たことの無い「人間」がいた。
「人間」は黙ったまま、ポプラの木さんの幹に手を触れた。
何があったのか分からなくて、私も外にでる。
すると、
その人は掠れた声でそう言い、わたしの手を取った。
ポプラの木さんの方を見ても、ポプラの木さんは何も言わない。
とりあえず、いつも森のみんなと話す事を言ってみる。
お互いの名前を知ったら、お友達だって、森のみんなは言っていたから。
わたしがそう言うと、アルトはちょっとだけびっくりしたみたいな顔をして、
そう言って、初めてにっこり笑った。
――きっとこの人は信じられる人だ。
わたしはどうしてか、その笑顔を見て思ったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。