第25話

退院
910
2020/11/14 09:00
伊吹side













あれから1週間。彼女は以前と変わらないほどに元気になった
そして記憶も、しっかりと戻った。









あなた「ありがとうございました」

看護婦「元気でね」

あなた「はい!」

『ありがとうございました』








お世話になった看護婦さんにお礼を言って病院を出た





そして志摩に家まで送ってもらった








志摩「じゃあ、ゆっくり休んで」

『ありがと』

あなた「志摩さん、ありがとうございました」

志摩「おう」








部屋に入って、2人で並んで座る




この数ヶ月、彼女の意識が戻らないんじゃないかって思った時もあった。
でも、彼女は頑張ってくれた


意識が戻らない間、あまり触れられなかった彼女の体
意識が戻ってからの1週間も、あまり出来なかった






この数ヶ月を埋めるように、俺は彼女をキツく抱きしめた








あなた「藍くん、」

『ん?』

あなた「ありがとう。藍くんのおかげで頑張れた」

『そう?俺はなーんもできなかったよ、』

あなた「そんなことないよ。
私が寝てた間も、犯人捕まえたんでしょ?」






九重さんから聞いたよ、って微笑む彼女






『俺は、あなたのおかげで頑張れた
あなたがいなかったら、犯人捕まえてられなかったよ』

あなた「ほんとに、ほんとに、、ごめん…なさぃ、」





蚊の鳴くような声で呟き、抱きしめる力を強くした彼女。

どんな彼女も、俺にはいてくれるだけで嬉しかった

もう絶対離さないと、誓ったから






『あなた、もう大丈夫だよ
俺がいるからね』


あなた「うんっ、、、」










久しぶりに、2人で布団に入った

あなたが寝て欲しいと言ったから。

志摩か隊長にでも、俺が寝てないってこと聞いたんだろう






あなた「おやすみ、藍くん。大好きだよ」

『ふふ、俺も大好き。おやすみ』






頭を撫でて目を閉じると、疲れと安心感がどっと溢れ、深い眠りについた











.

あなたside







藍くんと眠ってから、約10時間後

私は彼よりも先に起きてしまった

彼はまだ起きそうにない。どうせご飯もろくに食べていないのだろうと思い、作ってあげようと思った



でも、あれからスーパーが怖い。
それに、一人で行ったら心配をかけてしまいそうだった








そこで思い出した

何かあったら頼って欲しいと、九重さんの連絡先を教えて貰っていたことを










プルルル

数回コールがなった後、彼の声が聞こえた








九重〈もしもし〉

『九重さん、急にごめんなさい』

九重〈大丈夫だよ。どうしたの?〉

『あの、今から頼むもの、買ってきて貰えませんか?お金は後で払います
今藍くんが寝てて、多分ちゃんとご飯食べれてなかったと思うから作ってあげたいんですけど、冷蔵庫に何も無くて、、
スーパーに行くのあれから怖くなっちゃったし、行くと心配かけちゃいそうなので』

九重〈なるほどね。もちろん行くよ〉

『ありがとうございます』









そこで買ってきて欲しいものを伝え、電話を切った






九重さんが来るのを待っている間、久しぶりの家にいるのを静かに満喫していた

珍しく、コーヒーを淹れちゃって。





前はあまりコーヒーを飲めなかった
でも、お父さんが大好きだったから、今は飲むことができていた








数十分待った後、チャイムがなった。
その音でも藍くんは起きない。相当疲れていたのだと思った









九重「待たせてごめんね」

『いえ、大丈夫です。ありがとうございました』

九重「あんまり無理しないんだよ。
今日みたいに、いつでも頼っていいからね」

『はい!
九重さん、機捜じゃなくなったって本当ですか?』

九重「そうなんだ、、だからこれからは一緒の場所で仕事はできなくなっちゃったけど、
いつでも会いに来るから。伊吹さんや志摩さん、陣馬さんにも会いたいしね」

『待ってます、必ず来てくださいね』

九重「うん。じゃあまたね」







九重さんはポンポンと頭を軽く撫でたあと、帰って行った








そこでお金を渡すのを忘れていたことに気付いて慌てて声をかけた









『こ、九重さん!』

九重「ん?」

『お金、渡してなかったです!』

九重「大丈夫。僕たちからの退院祝いも兼ねてるので」

『え?』

九重「中よーく見てみてね。じゃ」






そう言って行ってしまった







中を見ると、そこには頼んだもの以外に小さな箱が






『これ、、、』







どこで見つけたのだろうか、指輪が入っていた

あの指輪と色が少し違うけど、形は一緒だ。

そして、メッセージカードが2枚入っていた




“伊吹さんとペアで使ってください。ネックレスにもできるようにしました。
退院おめでとうございます 九重”

“あなた退院おめでとう
また一緒に仕事できるの楽しみにしてるぞ。
その時は、この指輪を2人で付けてくれよ 陣馬”






思わず涙が溢れた。彼らはどこまで優しいのだろうか





























作者です。
いつもご覧くださる皆様、本当にありがとうございます!
お気に入りやいいねが増える度に喜んでいる作者でございます笑

いきなりですが、お知らせです
私事ではありますが11月いっぱいは更新をストップさせて頂きます。
これはもうひとつの作品も同様です。

忙しくてお話を書ける時間が確保できないため、お休みを頂きます。

帰ってきた時は、また読んでくださると嬉しいです
これからもよろしくお願いします!

以上、作者でした

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