第17話

症状
939
2020/10/24 09:56
伊吹side









解離性健忘








それが、彼女の症状だった

あの事件の症状が、ここまで長引いて表れるなんて。











帰り道は、気まずくならないように、あえて明るく振る舞う







『あなた〜ケーキでも買いに行こっか〜』

あなた「うん!」







思ったより元気だったあなた。
無理してるのかもしれないけど











『あなたは何が好きなんだっけ』

あなた「んー、チーズケーキ!」

『なるほど〜美味しいよね』

あなた「うん!」







ケーキを買って、家に帰る

手を洗って、2人で並んで座る






「『いただきまーす』」

あなた「ん〜美味しい!」

『美味しいねぇ』

あなた「写真、撮っておこ」

『そうだね』












多分、忘れても思い出せるようにだと思う。









彼女に、家族のことをいつ話せばいいのか。
悩んでいたらタイミングを逃してしまった









あなたがお風呂に入っている間、志摩に電話をかけた








『もしもし志摩ー』

志摩「どうした」

『あなた、解離性健忘っていう病気、だったわ』

志摩「解離性健忘、記憶障害か」

『うん、』

志摩「お前は本当に大変なやつだな、」










これって慰められてる?バカにされてる?

志摩はバカにすることはないと思うけどさ









『あなた、事件のことも家族のことも忘れちゃってる。なんでいないの?って』

志摩「そうか、」

『いつ言えばいいのかな』

志摩「いつか思い出すかもしれないし、今思い出させると、色々忙しかったのに重なって大変になるかもしれないぞ」

『そうだね、ちょっと様子見てみるわ』

志摩「おう。
...なんかあったら頼れよ?いや、なんかある前に」

『志摩、、ありがとな』

志摩「はいはい、」









電話を切ってすぐ、あなたがお風呂から上がってきた



そして真っ直ぐ俺の所へ歩いてきて、抱きついてきた





『っお、どしたの』

あなた「藍くん、大好き」

『…え、待って待って、可愛い』

あなた「ふふ、大好き!」

『俺も〜』




彼女の両脇に腕を入れて抱き上げる
そしてベッドに座らせた






あなた「藍くんの事は、絶対に忘れないよ」

『俺が忘れさせない。ずっと隣にいるからね』









頭の後ろを押さえて、優しくキスをした
角度を変えて、何度も





顔を離すと、顔を真っ赤にしたあなたが俺を見つめていた






この一瞬の沈黙は、今までとは違って
俺らにとって落ち着くもの。








あなたの後ろに回り、足で体をホールドする
そして後ろから抱きしめる




『ずーっと俺のそばにいてね』

あなた「うん」

『さ、髪乾かして寝るか!』

あなた「はーい」












髪を乾かしてあげると、途中であなたは眠ってしまった




彼女をベッドに寝かせ、電気を消して同じ布団にもぐる







絶対に離さないように、彼女の華奢な体を抱きしめ、俺も眠りについた

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