第36話

嫌なくらいに
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2020/12/23 12:59
伊吹side













楽しくデートしたいのに、頭の中では

あなたに何かあったら
守れなかったら
間に合わなかったら、、、

そんな考えがぐるぐるしている。
今日は、志摩も陣馬さんも居ない。俺一人で何とかしなきゃいけない。

今までそういう場面は何度もあったけど、あなたが意識を失って、意識を取り戻して。それからどうしても彼女が心配でたまらなくて、
正直に言うと、過保護になった気がする。










あなた「藍くん?」

『ん?』

あなた「大丈夫?なんか難しそうな顔してるけど、」

『あぁ、ごめんごめん!ちょっと考え事してたわ
せっかくのデートだもんね、楽しもっか』

あなた「…うん!」







顔に出てたか、ダメだな、


あなたに心配かけられない













少しだけ、気まずい空気が流れる。

その時、あなたが動きを止めて、ショーウィンドウをじっと見つめていた



『入る?』

あなた「うん!」








にっこりと笑った彼女。
2人でその店に入った。


そこは、宝石店。









あなた「こんなところ、入っちゃダメな気がするんだけど大丈夫かな?」

『全然大丈夫だよ?』

あなた「良かったぁ」








「いらっしゃいませ」

『こんにちは』

あなた「うわぁ、綺麗、、」








何種類もの宝石が並んでいて、一つ一つがキラキラと輝いていた










『欲しいものある?』

あなた「っえ!ダメだよ全部高いもん、」

『あなたが欲しいなら買ってあげるよ?』

あなた「無理しちゃダメ!」

『あなたのためなら全然いいんだけどなぁ、』







段々と元の空気が戻ってきた、
でも俺の勘は、今までにも増して嫌なくらいに反応している。

それは、最悪にも的中してしまった












強盗「全員座れ!」

『っ、』

あなた「藍くんっ、」






最悪だ。
よりによって、なんでこんな時に、、、





俺はあなたを守ること優先で、彼女をコートの中で抱きしめる

彼女は俺の胸の中で震えていた








『俺が何とかする』

あなた「っでも、」

『大丈夫。あなたは志摩に電話して貰っていい?犯人にバレないよに静かにね』

あなた「…わかった、」







意を決したように頷いた彼女を、力を込めてぎゅっと抱きしめた後、
店員さんとやり取りしている強盗の元へ向かった










.

あなたside







プルルルル

ガチャッ






志摩〈もしもし?〉

『っもしもし、志摩さんっ、、あの、っごう、っと、が、っ、』

志摩〈大丈夫か?落ち着いて、もう1回〉

『っ、強盗!っが、いて、
今藍くんと、っ』

志摩〈場所教えてくれ〉

『○○って場所の、✕✕って宝石店、ですっ、』

志摩〈わかったすぐ行く。
伊吹は大丈夫か〉

『はい、何かされてる、っ、訳じゃなくて、っ
何か、喋ってますっ、』

志摩〈わかった。あなたちゃんはとにかく落ち着いて、あまり目立たないように〉

『はい、』







誰でもそうだけど、自分は特に、
事件の犯人に対する恐怖心が強かった

本当は藍くんに近くにいて欲しい。
でも、藍くんはみんなを守るために頑張ってくれている

そんなわがまま、口が裂けても言えない。






涙が止まらなくて、体が震え出す
あの事件がフラッシュバックして、体を無意識に抱きしめる






藍くんの様子なんて、見ることもできない
視界が涙で滲んで、、、








パトカーのサイレンの音が聞こえて、警察官が中に入ってきた。

もう藍くんが仕留めていたからなのか、なんの抵抗もなくたくさんの警察官が入ってくる。







店の外にはたくさんの野次馬がいて、なんだか怖くなって

気が付けば、その中を無我夢中で走っていた。
少しでも早く、この空間から抜け出したかった

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