「誤算」だった…なんて言いたくは無いけれど。
でも、この数ヶ月感じていた“違和感“を理解するのには少し過ぎるくらいの衝撃で。
彼くらいになれば女のひとりふたり私以外にもいるだろうなんて思っていたけれど、そう来たか、、なんて、。
私は自分でも驚くくらい、低い声で夫の竜胆に言い放った。
『……なにしてんの?』
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思い返してみれば、竜胆は私に冷たかった。
というか、愛がなかったようにも思えた。
帰ってくるのなんて朝方だし、朝方帰ってきたかと思えば起こされて「おい、俺のお気に入りの服どこにやったんだよ」といって私に探させるし、普通に首にキスマークつけて帰ってきたことだったあった。
そうやって思えばよくもまあ私は今まで続いたなって思う。
しまいには今日の朝なんて、竜胆に
竜胆「おい、今日も帰り遅くなる」
って言われて笑顔で
『わかった』
そう返しただけなのにむっと眉間に皺を寄せてゴミを見るような目で
竜胆「…お前、、なんか気持ち悪いんだよニコニコして…」
って言われたばっかじゃないか。
それで、あまり面識のない夫の兄である蘭さんに
蘭「見せたいものがある」
なんてにこにこした顔で言われたから付いてきてみれば
蘭さんの自宅で2人楽しそうに裸の付き合いってか。
蘭さん、きっと私よりも前から多分この二人の関係を知っていたのかしら…
哀れんだ目で蘭さんを見てみれば彼はけろっとした顔で二人を見て
蘭「なーんだ、今日はちと終わるの早くね?」
なんて。
これにはぎょっとした顔にでもなるよ。
蘭さんはそのまま私を連れ出してさ、近くのバーまで無理やり車に私を突っ込んで来たの。
事の流れが早すぎて何が何だか分からないままで。
そんでもって高そうなワインをぐいっと飲み込んだ蘭さんが私を見つめて
蘭「…今夜は月が綺麗ですね」
なんて言うもんだから
人生何が起こるかなんて誰も想像できやしないって話。
Prologue END…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!