気を取り直し、接客を慎重にやっているとお姉ちゃんがやってきた。お姉ちゃんの後ろにはお姉ちゃんの彼氏、天沢海浬先輩がいる。
いや、うさぎってことはわかったよ。
ピンク色の長い耳を付けて、これがうさぎじゃなきゃなんだというんだという格好をしている。
私が言ったのはこういうことじゃなくて
得意げに言うお姉ちゃんに否定する言葉なんて言うことは出来ずにうん、と頷いた。
可愛いんだよ?
可愛いんだけど、…うさぎ?
お姉ちゃんならドレスとか着れただろうに。
ピンクのワンピースにきれいなパールが付けられキラキラと光っている。まぁ、可愛いから大丈夫か。
あんな格好をしているお姉ちゃんとは裏腹に制服を着たThe大人っぽいという天沢先輩。そんな先輩からの質問に一条が横から答えた。
戸惑い気味の天沢先輩とお姉ちゃん。
私はウェイトレスを続ける一条をにらみつけた。
追いかけそうになったとき後ろから聞きなれた声がした。
ここがふんっとそっぽを向いた。
後ろにはここが言う通り理人くんがいた。理人くんこと香月理人くんは私の一つ下、つまりここと同い年の隣に住んでいる男の子だ。
理人くんはふっと笑ってここを見つめていた。
理人くんがここの頭をぽんぽんとした。
そのとき驚いたような声を出し、絢香が飛んできた。
いつもは滅多に浮かべない笑顔を浮かべここが笑顔で対応している。これが外面がいいって言うんだよ。
驚いたような声を出す莉音と私をバシバシ叩く絢香。
あ、言わなきゃダメだった?
ごめん、と絢香に謝った。次からは言わないとね。隠し事する気なんてなかったけど気分悪いよね。
絢香が私の腕をガチッと掴んだ。
おいっ、と背中を叩かれた。
うん、さっきとおんなじパターンだ。
あれれ?
私たち似てるのかなぁ。
姉妹だから似てるのは当たり前かもしれないけど学校一の天使、お姉ちゃんと今をときめく人気モデル、ここと似ているというのはうーんと唸ってしまう。
あの二人は妹から見ても、姉から見ても可愛い。
だから私はそんなに可愛くないから神様は不公平だと思ったり思ってなかったり…。
背は確かに私が180cm、ここが170cm、お姉ちゃんが165cmあるから普通に高いと思う。
身長が高くていいな、なんて言われたりするけど天井に頭打つわ、小さな頃から背が高かったからからかわれたりと嫌な思い出がたくさんある。
上目遣いで見るお姉ちゃんに天沢先輩がうん、と頷いた。
そう言ってお姉ちゃんが引っ張ってきたのは一条。
お姉ちゃんの気まぐれで一条と一緒に回ることになってしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。