文化祭当日──。
今日は文化祭。
これまで私たちは劇の練習を頑張ってきた。
今日はその成果を発表する日だ。
練習で棒読みになったり…、といっても私は最初だけ少しセリフを読むくらいだ。だが、老婆のときの姿勢、そして老婆の姿からキレイな魔女になるとき、着替えるのが大変だったりする。
一番大変なのはもちろん莉音。そして、来栖くん。
ガストン役の一条も大変だったと思う。
あの、ナルシスト役をやっている一条を見ると笑ってしまう。いつもとのギャップが激しいからだろうか。
私たちのクラスのカフェはみんなセンスがいいのかとてもおしゃれになっている。童話系な女の子としてはテンションがあがる配色。
こういうことを私が言ったら柄にもないといじられるんだろうけど。お姉ちゃんやここ、莉音、絢香が言ったら不自然じゃないのにな。
もうこんな時間かと最後の確認をしながら更衣室へと向かった。
昨日、衣装を確認して着たけれど思った以上のクオリティだった。私の衣装はもちろん、莉音のドレスも。
おしゃれな絢香はメイクなどを担当している。
髪をくるくる巻いたり、メイクをしたり。
いつもよりはマシに見えると思う。
隣の莉音は軽く後ろにひとつにまとめている。
簡単な髪型なのに可愛く見える莉音は本当に天使だ。
冗談でもそれは悪いやつ、と絢香を見た。
ひょこっと顔を出した莉音は天使以外の何者でもなく、ギュッと莉音を抱きしめた。
着替えてきた莉音はふわっとした水色のワンピースを着ている。本当に可愛い。
「リハーサルするよー」
女の子が呼びに来てくれて舞台に移動した。
舞台に行くと、既に用意し終わった一条や来栖くんの姿があった。ナルシスト役、ガストンの格好をした一条は素材の良さが引き立っているような気がする。
べーっとしていると絢香にメイクが落ちると怒られてしまった。
私はこの可愛らしいワンピースの上からフードを被り、顔を隠すことによって老婆になる。
拳を突き出した一条に私も拳を突き出した。
いつもは意地悪で喧嘩ばっかりだけど、たまにこういうふうに言い合える関係はすごくいいなと勝手に思っている。
せっかく見直したと思ったのに、また意地悪を言う。
私はこういう日常が嫌いじゃない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。