1日の授業を終え、帰宅しようとしたとき。
女子生徒に声をかけられた。
好かれることはとても嬉しいのだが、毎日誰かに告白されるのはさすがにしんどい。
せっかくあなたちゃんと交換条件とはいえ仲良くできたんだから。
早く帰りたいのだ。
女子生徒に連れてこられたのは、別棟の階段。
人気がないから、告白などで有名らしい。
……なんで入学2日目でこんなこと知らなきゃいけないんだろうか。
彼女の名も知らないのに。
そして入学2日目なのに。
ほぼほぼ一目惚れのようなものだ。
それで告白するとか、信用ならない。
今日のは少しばかり厄介みたいだ。
この後つけてくるのは何となく分かってた、けど。
家まで行けば、あなたちゃんがいるはず。
そしたらすぐ終わることだ。
あなたちゃん、頼むから早く帰ってきて……。
駅への道を急いでいると、後ろから悠莉が追いかけてきていた。
急いで帰ることしか考えていなかったから、悠莉のことをすっかり忘れていた。
悠莉………。
そうやって臨機応変に合わせてくれる悠莉の即興力には驚かされる。
やっぱり、つけてきてる……。
悠莉と話しながら、後ろをチラチラと気にしていたが。
さっきの女子生徒が、つけてきていた。
あえて気づかぬフリをして、悠莉と話し続ける。
すると駅についた。
駅の改札に入ったところで、駅のトイレに誘った。
もちろん作戦会議のため。
**女子生徒は電車でもついて来ていて、僕らが降りる駅で降りた。**
改札を出たところで。
若干メンヘラ気質な人だ。
これは……厄介かも。
言い争う僕らに、悠莉の声が割って入った。
悠莉の方を見ると、学校帰りのあなたちゃんがいた。
言いながら、さりげなくバックハグした。
少し照れてるあなたちゃん。
ニセのカレカノだけど、いちおう僕のモノになっているのが嬉しい。
はーい今この女舌打ちしましたー
絶対黒ですこの女ー
少し甘えた声を出すあなたちゃん。
演技が上手すぎて笑っちゃいそうです((
せっかく“よもぎくん”が本気で演じてるんですからね。
僕も全力で応えますよ~!
はーい僕今聞こえました~
この女絶対黒でーす
悠莉の言ってた女子の闇ってこのこと、なのかな。
怖いな………。
ま、とりあえず帰りますか。
ってか、さっきから悠莉とあなたちゃん話しすぎです。
妬きますよ、?
あ、気づいたら悠莉ん家と僕ん家の分かれ道まで来ましたね。
**悠莉帰宅**
とりあえず、今日のお礼は言わないと。
悠莉、?
他の男の名前を聞くと、なんだかモヤモヤする。
気づいたら僕は、あなたちゃんを抱きしめていた。
あなたちゃんからしたら、僕はただの義理の兄で、ニセのカレカノ……なのは、分かってるけど。
僕と二人の時に、他の男の名前を呼ばないでほしい。
僕のことを「お兄ちゃん」って呼ばないで欲しい。
束縛しすぎは嫌われるの分かってるけど。
…………あなたちゃんには、僕冷静でいられないみたいだ。
ごめんね……けど僕、嫉妬しちゃうから……。
お願いだから、他の男のモノにならないで……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。