体育館のすみの窓から見た 外の風景が暗くなった気がした。
気のせいかもしれない。
中がカラフルすぎるからそう見えてしまうのかも。
あなたを含め、みんなすぐに立ち上がる。
3秒かけて、ゆっくり頭をあげる。
音を立てないように座る。
パイプ椅子はガタガタしていて座りづらい。
まあ この学校は古いから仕方がない。
それより、ここからが本番だった。
校長先生の話が長いのだ。
あなたは目を開けたまま考え事をする特訓をしてきた。
そうすればこの退屈な時間を有意義に過ごせる。
一見、あなたは姿勢正しく話を聞いているように見えるだろう。
あなたの脳内では、オリンピックが開催されているとは知らずに。
オルゴールのような優しい音色で意識が戻った。
卒業証書授与が始まったようだ。
さらに、まだ午前なのに空の様子がおかしい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!