あの後校歌を歌ったりして、いよいよ式が終わろうとしている。
雨は激しさを保っていて、けど雷は止んでいた。
卒業ってこんなんなんだ。
未だに少し自覚がわいていない。
拍手の中、あなたは足を動かした。
体育館の外へと。
ふと、壁に貼ってあるポスターが目に付いた。
入学した時、眺めたっけ。
ほとんど読めなかった漢字が、全て理解できるようになった。
それに、今はポスターが小さく感じた。
背伸びしなくても、ポスターの上の画鋲に手が届く。
成長、したんじゃん。
体育館を出る前にもう一度中を見たくて、振り返る。
中はキラキラで、夢みたいだった。
小さく呟いて、体育館から出る。
渡り廊下はひんやりしていた。
桜はほとんど散っていて、ピンクのじゅうたんになっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。