今日は最高の卒業日和だ。
満開の桜
少し暖かい風が吹いて
桜吹雪となる
3年間の様々な思いが詰まった卒業証書を手にし別れを悲しんでいるクラスメートを遠くから眺める
‥でもそこに彼女がいない
あの人がいる場所なんてたった1つだ
僕は"いつもの場所"へ向かう
タッタッタッ
「音楽室」
前は勇気を出せず開けられなかったこの扉
でも今は違う
バァンッ
やっぱりいた
待ってたよ。と言うばかりの微笑み
‥ここは僕らをつないだ場所
"いつも通り"弾いているアイリの横に座り、僕は目をつぶって音楽を聴く
すると突如、音が鳴り止んだ
どうしてその話が。今。
初めて三田くんって呼んだとき‥
あぁ、花音と言い争ってた時か
よく覚えてるな
もう1年半以上も前の話なのに
何かを察したのだろう
僕をじっと見る彼女
僕も彼女を見つめる
アイリは安心した顔になり、僕の手を包み込むように握る
僕はこの人に何回救われたんだろう
そしてきっとこれからも何回も救われるんだろう
アイリに、ピアノに、音楽に。
そっと彼女の顔に近づく
‥唇が重なる
離すと目があった
恥ずかしそうにアイリは顔を手で覆う
僕も少し頬が赤色に染まっていくのがわかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!