第9話

Sound #9
57
2021/03/14 04:42
僕
あっという間の3年だったな
今日は最高の卒業日和だ。
 


満開の桜

少し暖かい風が吹いて

桜吹雪となる



3年間の様々な思いが詰まった卒業証書を手にし別れを悲しんでいるクラスメートを遠くから眺める



‥でもそこに彼女がいない







僕
もしかして


あの人がいる場所なんてたった1つだ


僕は"いつもの場所"へ向かう


タッタッタッ



「音楽室」



前は勇気を出せず開けられなかったこの扉


でも今は違う







バァンッ














やっぱりいた
僕
『アイリ』
アイリ
アイリ
三田くん

待ってたよ。と言うばかりの微笑み



‥ここは僕らをつないだ場所

"いつも通り"弾いているアイリの横に座り、僕は目をつぶって音楽を聴く






すると突如、音が鳴り止んだ
アイリ
アイリ
‥そういえば
僕
どうした?
アイリ
アイリ
三田くんって自分の名前好きじゃないの?
僕
え?

どうしてその話が。今。
アイリ
アイリ
なんか私が初めて三田くんって呼んだとき凄い驚いた顔してたなぁ‥って思って

初めて三田くんって呼んだとき‥


あぁ、花音と言い争ってた時か

よく覚えてるな


もう1年半以上も前の話なのに
僕
‥いや、嫌いではないけど
僕
あの時は凄い何年ぶりに呼ばれたからさ
アイリ
アイリ
何年ぶり‥‥

何かを察したのだろう

僕をじっと見る彼女
僕
そう。僕はあの日まで誰の心にも居場所がなかった
僕
でも今は‥

僕も彼女を見つめる



アイリは安心した顔になり、僕の手を包み込むように握る
アイリ
アイリ
私がいる


僕はこの人に何回救われたんだろう


そしてきっとこれからも何回も救われるんだろう


アイリに、ピアノに、音楽に。

そっと彼女の顔に近づく




‥唇が重なる






離すと目があった








恥ずかしそうにアイリは顔を手で覆う

僕も少し頬が赤色に染まっていくのがわかった

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