次の日の朝、俺は学校へ向かう分かれ道の前に立ち止まった。
いつも通る右の道にはきっと、昨日の電柱が倒れているはず。左から行けば無難なのだろうが、どうなったのか見たい、という野次馬本能が顔を出しているのも事実だ。
散々迷った末、――右の道に行くことに決めた。
昨日届いたあの妙なメールには、「帰り道」のことしか書いていなかったはず。だから今は何か事故など起こることはない…と思いたい。
すると、
ヘルメットをかぶった作業員らしき人が数名、忙しそうに歩き回っている。その足元に、雑然と横たわる黒い電柱があった。
電柱の下の地面には、少しヒビが入っているように見えた。
――もしあの下に俺がいて、電柱の直撃を受けていたら。
そんな怖い想像が頭を過る。
それと同時に、今、こうして生きていると思うと、
そう考えると、怖い、と感じていたあのメールに、感謝すら湧いてきた。
近所の人に何かを説明している作業員を横目に通り過ぎ、学校への道を進んだ。
あのメールの、本当の意図も知らずに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。