晩ご飯の材料を買って家に帰る。
『ただいま〜』
道「おかえり!!待っとったで!」
飼い主の帰りを待っている犬のようで可愛くてつい頭を撫でてしまう。
道「ちょ、なにしてんの」
『あ、ごめん。犬みたいで可愛くて』
道「ほんまずるいわ〜」
手で顔を覆い「あーあー」なんて言いながら部屋に戻っていく。少しうるさい…
晩ご飯の時間にはまだ少し早いので今日もらった台本読もうかな~
カバンから台本を取り出しチェックする。
道「ん?台本読むん?」
『うん。駿佑はもう見た?』
道「あぁ〜うん、見たで、」
歯切れが悪いなぁ…どうしたんやろ
ま、どんな話か気になるし見よ!
私の役は家族全員を泥棒に殺され、そのショックで記憶を失った女子高生。明るい性格だったが記憶をなくしてからは無口で何事にも興味がなくなり空っぽの人間に。
駿佑の役はそんな私に恋をする役。必死のアプローチも叶わず空振りしている。ある日犯人が刑務所から脱走。それをきっかけに私は記憶を徐々に思い出していく。
ふんふん。難しそうな役だー
ほーそれで最後は結ばれて終わりね~。はいはいそれでキスシーンもあるのね。うんうん
……キスシーン?
バッと駿佑の方を見る。
道「あー見終わった?いかがですか?キスシーンがあるそうですね」
ニヤニヤしながらわざとらしくそう言ってくる駿佑。腹立つ〜!!
道「まあそんな緊張せんでも俺ら1回してるしな!」
『あれは!!!!駿佑が勝手に!無理矢理!!』
道「緊張せんでいいように今から練習しとく?」
『晩ご飯抜きね』
道「ごめんて!許して~」
まあ私は鬼じゃないからそんな事はしませんけど、ずっと謝ってる駿佑が面白いからそのままにして「もうそろそろご飯作ろっかな〜」なんて思っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。