試合当日
つぼみ
「緊張する…」
心夏
『そう?』
つぼみ
「なんで心夏は緊張しないのー!」
※めっちゃ緊張してます
しないわけないじゃん、足ガクガクしそうなんだけど。でもさ、私たち先輩が緊張してる素振り見せたら後輩が不安になるでしょ
心夏
『あんたはもうちょっと自信持ったら?』
そう言って背中を叩いた
つぼみ
「だねー、でも声震える」
心夏
『まぁそれがつぼみだもんね』
心夏
『でも、キャプテンでしょ?』
つぼみ
「…だね!よし!みんなウォーミングアップ始めるよ!」
「「「「はい!」」」」
さすがつぼみ、と感心しながら私もウォーミングアップに入ることにした
「すみません!」
ウォーミングアップの途中でボールが違うコートへ行ってしまった
心夏
『私が取りに行くよ』
つぼみ
「よろしくー」
今は大丈夫な時だったから私が取りに行くことにした
そこでひとつの高校が目に入った。男子なんだけどね、雪城高校、去年優勝の強豪校だ
なんと丁度、雪城高校が練習しているあたりに飛んで言ってしまった
心夏
『行きにく…』
なんて呟くけれど、ボールは取りに行かなきゃ行けないしな
ボールを取ろうとした時だった
雪城高校の誰かが、スパイクを打っていた。高く飛ぶその人は、照明で眩しくて、目が開けれないほどに輝いていた
見とれていたんだろう。私はそのボールがこっちに向かっていることをすっかり忘れてしまっていた
そのボールは、早くて、とったら腕がもげるんじゃないかって思うほどに力強かった
「危ない!」
誰かがそう叫んだ。でも私の足は動かなかった
そんなボールは、今までに見た事のないぐらいの威力だったからうずうずして、リベロとしてそのボールを取りたくなった
私は構えていた
トン
いまさっきまで、あんなに威力のあったボールは軽やかに宙に舞っていた
私があげたのだ
思った通り腕はじんじんして、でも達成感があった
心夏
『すっごい威力…』
女子だったら味わうことの無い痛み、それが私には嬉しくて
そんなスパイクを打てる人を知りたくなった
「すっげぇ!あいつのスパイクとった!?」
「男子でもなかなかいねぇぞ!?」
私の周りには雪城高校の人達で囲まれていた
私の身長は164cm
雪城高校の人たちは普通に170は超えているだろう
そんな肉壁に挟まれながら、「名前は!?」「どこの高校!?」などと質問されていた
心夏
『す、すみません!自分のところ戻らなきゃ…』
と言って逃げるように戻っていった
でも、あんなスパイクに出逢えたのはすごい経験だったな…
「…」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。