第27話

涼④
726
2020/03/24 13:31
急いで涼の所に向かった私。
涼の所に行くまで頭の中で色々考えた。
最初に何て声掛けよう。
大丈夫?
大丈夫な訳ない。
とにかく、まず話を聞こう。
話を聞かないと何もわからないし言えない。

涼の家の前に着いた。
涼は自宅前で座りこんでタバコを吸っていた。
足元には吸殻が山盛りになっていた。
自分を落ち着かせる為に吸っていた様子だった。
『涼!』
「おう!待ってたぞ!」
空元気なのが、すぐにわかった。
『とりあえず車乗って。』
「おう!そうだな!」
そんなに無理しなくて良いのに。
空元気が見ていて痛かった。
とりあえず公園の駐車場に車を止めた。

暫く黙り込む。
『涼。まず何があったか、ゆっくりで良いから話して。ちゃんと聞くから。』
すると涼は笑った。
「あははは。もう笑うしかねーわ。」
喋ったとき、お酒の臭いがした。
『涼。空元気は良いから。私に言ってくれたよね?辛いときは泣けば良いって!私は涼にたくさん救われた。この1ヶ月。明斗の事、忘れられないけど考える時間は減った。それは明らかに涼のおかげ。今度は私の番だよ!涼を助けたい。だから全部話して!』
涼は、唇を噛みしめながら、ゆっくり話始めた。
涼はバイトの掛け持ちをしてた。
「おとといさ、夜のバイトだったんだ。いつもならバイト終わったら速攻帰るんだけど、その日に限って先輩が飲みに誘ってきてさ。俺めんどくさいから断ったんだよ。いつもなら、それ以上誘ってこないんだけど、その日に限ってしつこくてさ。世話になってる先輩だから仕方なく付き合ったんだよ。そんでカラオケで飲みしたんだけど帰してくんなくてさ。2回くらい自宅から電話きたんだけどダルイじゃん?親の電話。だからいつも出ないんだ。そんでやっと解散したら着信凄くて。元カノの友達から。なんで今さら電話くんのかなーって不思議でさ。しかも凄い着信だったから仕方なく、かけ直したんだよ。」
涼は、1回落ち着きたい様子だったから
『涼。時間はあるからゆっくりで大丈夫。ちゃんと最後まで聞くから。』
そう言うとタバコに火を着けた。そしてまた話し出した。
「そしたら元カノの1番仲良い子で俺も会った事あるし知ってるからさ。電話したんだ。そしたらさ、凄いキレられて。なんで電話出てくれなかったの?家に居てくれなかっの?って突然言われて。ちょっと俺もイラっとしちゃって。なんでキレてんだよ!って言ったら元カノの友達が泣き出してさ。元カノが死んだって言われたんだ。冗談だろ?って言ったら冗談じゃないって!その子の話だと元カノが俺と、やり直したいって言ってたらしくて。元カノが電話じゃなくて直接会って涼に伝えたいってアポなしで来たらしいんだ。親も元カノ知ってたから来てる事伝える為に電話してきたみたいで。そしたら元カノは待ってるから大丈夫です。って待ってたみたいなんだ。1時間くらい俺を待ってくれてたみたいで。でも俺が帰って来ないから出直すって元カノが、その子に連絡したみたいで。その帰り道。俺んちの目の前の交差点あるだろ?あそこでトラックと事故って死んだって。」
私は、何も言えなかった。
そして涙が止まらなかった。
「俺が飲みに行かなければ、親の電話に出てれば……全部俺のせいだ。アイツを死なせたのは俺だ。」
涼は泣いてた。当たり前だ。
あたしは声をかけれなかった。
ただ1つ伝えたかった事だけを伝えた。
『涼のせいじゃない!それは絶対違う!涼が自分を責めたら元カノちゃん、もっと辛いから。誰のせいでもないよ!』
そして涼の背中を、ゆっくり撫でた。
「あまね。ありがとな。来てくれて。俺1人で居たらヤバかったわ。」
『当たり前じゃん!友達でしょ?何時まででも付き合うから。私が居て落ち着くなら、側に居るから!』
「あまね。マジサンキューな。お前居てくれて良かった。」
『あたしも涼に、いっぱい助けてもらったもん!当たり前でしょ?』
「じゃワガママ言っても良いか?」
『私に出来る事なら何でも言って!』
「しばらく一緒に居て欲しい。家にいると部屋から見えんだよ、あの交差点。キツイんだ。」
『わかった!一緒に居るよ!落ち着くまでずっと。』
「ちょっと家行って良いか?着替えとか少し持ってきたい。」
『わかった。』
そして涼の家に向かう途中、その交差点を通らなければならなかった。
花が置いてあった。胸が痛くなって。
涼も直視出来ない様だった。
「すぐ来るわ。」
『うん、わかった。』
私は涼が来るまでの間に交差点に行って手を合わせた。
『涼を恨まないであげてね。』
それだけ言って車に戻った。
「待たせたな。行こうぜ。」
『うん。行こう。どこ行く?』
「とりあえず、この付近から離れたい。」
『わかった!じゃ適当に行っちゃうよ!』
「おう。任せた!」
そして私達は行く宛もなく走りだした。

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