第85話

直弘31
138
2020/04/26 01:51
それからも、お互い自由に過ごした。
私は自分の誕生日が来るのが楽しみで楽しみで仕方なかった。

あっという間に誕生日1ヶ月前になった。
あと少し。約2年待った。
長かった。苦しい時もあった。
充を傷付けたりもした。
でも、やっとここまで来た。
私には明るい未来が待ってる。

そんな時、直弘から電話がきた。
「今から行くわ。」
『うん!』
きっと戻るって話するんだろうって嬉しくなって直弘が来るのが待ち遠しかった。
「着いた。」
『すぐ行く!』
そして直弘の車に乗り込む。
いつもの様にホテルに行く。
なんだかドキドキして顔の筋肉が緩む。
部屋に入ってタバコを吸いながら直弘が話すのを待った。
だけど全然話さない。
『直くん?なんで黙ってるの?』
「…やっぱり無理。」
『えっ何が?』
「お前と、より戻すの。」
頭の中が真っ白になった。
『…えっ!?なんで?意味わかんない!』
「好きな女が出来た。」
『意味わかんない!!散々期待させて?今更、好きな女が出来た?ふざけないでよ!2年待ったんだよ、私!たくさんの人を傷付けても直くんと戻る為に、ずっと待ってたのに!この前プレゼント考えておけとか言ってたよね?誕生日は一緒に過ごすって言ったよね?私を、どこまで傷付けたら気が済むの?私なら何でも直くんの思い通りになると思った?信じられない。ひどい!』
「仕方ねーだろ、好きになっちまったんだから。」
『はっ?その一言で片付けないでくれる?私の2年返してよ!私が傷付けた人に謝ってよ!バカにすんのも、いい加減にして!何でも許されると思ったら大間違い!』
私は泣きながらキレて止まらなかった。
そんな一言で受け入れられる訳ないじゃん。
『何か言ってよ!!』
「まぁ、わりーなとは思ってるけど。」
さらに腹が立った。
『じゃなんで今ホテルに居るの?私達。車の中で話せば良かったでしょ?なんで?最後に抱こうと思った訳?』
「うん。」
呆れた。もう言葉が見つからない。

私達は"体の相性"が凄く良かった。
だから直弘は最後に抱きに来たんだろう。

しばらく言葉にならず私はタバコばかり吸ってた。
「俺、シャワー浴びてくるわ。」
そう言って直弘はシャワーを浴びに行った。

少し頭が冷えてきた私は直弘がシャワーの間、色々な事を考えてた。

直弘の気持ちは今、私にない
他の子が好き
私は直弘と戻れるって2年も待った
でも、お互いが"好き"にならなきゃ付き合うって成立しない
もう選択肢ないじゃん。
私が諦めるしかないじゃん。
直弘の気持ちが私に無いんだから
腹が立つより呆れた。
なんかもう、どうでもいいや。
疲れた。

しばらくすると直弘がシャワーから戻ってきた。
『抱きたいなら抱けば。直くん気持ちが私に無いなら無理だもんね。』
「まーな。」
そして最後の直弘とのセックス。
涙が止まらなかった。

そして私達は終わった。
付き合って3年。中途半端2年。
トータル5年。
無駄にした5年。
もう言葉なんて無い。

ホテルを出て車の中も無言。
そして私の家に着いた。
「じゃーな。」
『うん。さよなら。』

呆気なく帰って行った。
私は声を出して泣いた。
もう未来なんてない。
幸せになんかなれない。
本当の自分なんてない。

私達は終わった。


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