第86話

月夜に2人の影が(鹿野院平蔵)
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2023/04/15 18:20
月が見たくなった。

吸い込まれるようなあの光を見つめていると
少しだけ心がふわふわして、
なんとなく、切なくなる。

その感覚が嫌いじゃなかった。
あなた

……綺麗。

強い光が心に負った傷を隠してくれるようで、
あなたはただ、夜空に見惚れた。

そのままぼんやりしていると、突然背後から抱きしめられた。
鹿野院 平蔵
良かった。……ここに居たんだ。
あなた

平蔵、ごめん……起きてたと思わなくて。

平蔵の腕にそっと触れると、その力がまた少し強まった。
鹿野院 平蔵
どこかに、行っちゃったのかと思った。
あなた

どこにも行かないよ。

平蔵はあなたに向かい合うと、長い口付けを落とした。
月の光が眩しい。……ここには、2人しか居ない。
鹿野院 平蔵
もう、ひとりで外に出たりしないでよ。
あなた

……ごめん。大丈夫、私ももう平蔵なしでは生きられないんだから。

鹿野院 平蔵
僕もだよ。……絶対に、離さないから。
覚悟はできてるよね?
あなたは平蔵の腕の中に潜り込んで、彼の胸に顔を埋めた。
慣れた匂いに目を閉じる。

痛いくらいの愛情をくれて、苦しいくらいに……好き。
あなた

平蔵の手に落ちて、逃げ切れる人なんかいないでしょ?

鹿野院 平蔵
当たり前。
あなた

あの日から、私はもう平蔵のものなんだから。
どこにも行けるわけないでしょ?

平蔵は、今度は優しくあなたを包み込んで耳元で囁くように言った。
鹿野院 平蔵
……君を傷つけようとする奴も、僕は絶対に逃がさないし、許さないよ。
あなた

私は……平蔵が隣にいてくれれば満足だけど。

鹿野院 平蔵
僕が嫌だから言ってるんだよ。
誰にも君を渡さないし、触れさせはしない。
目を閉じる。平蔵の息遣いを近くに感じる。
他に音はしない。静かな世界だ。
あなた

……ずっと一緒にいてね。

わかっている。この世に絶対なんて存在しない。
けど、この想いだけは……絶対に消えないと、そう信じている。
鹿野院 平蔵
もちろん。
僕はあなただけのものだよ。
あなた

平蔵が居てくれるなら、他のものなんか何も要らない。

鹿野院 平蔵
約束するよ。
そうしてまた、契りを交わすように口付けを落とす。
ただ、永遠を願って堕ちていく。もう戻れない。

終わることのない共依存。
それこそが、2人にとっての幸福。

いつまでも、こんな月夜が続きますように。

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