第38話

振り返る
19
2023/02/08 08:00
















遥羽?
ふゎぁ…んん
生暖かい風が髪の隙間を通る。
何だか懐かしく思って、目を瞑ってみた。
遥羽?
……涼しい
…余裕ある様に見えるかもしれないけど。
これでも全然思い出せてないんだよな。




「…とわくん」




遥羽?
………あの時は、何でそんなこと知ってんのかって思った
遥羽?
今思えば、いつも誰よりも俺らをよく見てた
遥羽?
ま、そりゃあれくらい…知ってるよな…







『うん、それで頼まれてさ』

『だから連れてきたと…』

『え〜っ何その目!』
『僕はただチアちゃんを此処に連れて来ただけなのに!!』

『…もう、はいはい』
『分かったから…』

『…ね、え?』

『あ、どうしたの?』

『こ…れ、なに?』

『…ああ、これ?』
『これは…』


香織?
(…ピアノ………)


『ずっと、耐えてた。』
『俺達の代わりに、ずっと…誰よりも苦しんでた。』

「…そんな」

『……でも、それでも』
『例え記憶を失っていても、残っている感覚で苦しんでも、』

『俺達を恨んだことは、無かった。』

「…チアちゃんはずっと、苦しんでた…?」

「…なんで俺らに黙ってたのぉ?」

『…それは』
『“今”、言いたかったから…だ。』







___『俺じゃ、どうにも出来ないから。』
『だから、俺の……フリアの代わりに、チアを守って欲しい』

『チアに、この世界を見せてやって欲しい』



「…うん」

「分かった」







香織?
…私


香織
香織
……私達、約束したの
香織
香織
まだ、あの子に教えたいことが沢山ある
香織
香織
……でも
…此処が本当に「現実」なら、もう。
香織
香織
諦めないと、いけないのかな

















___お客さん?
タオイ
タオイ
…ああ。
タオイ
タオイ
そろそろ行かないと、多分間に合わない
…ふふ、折角「神様」になったんだもんね。
かっこよく登場しておいで
タオイ
タオイ
……白袮、
良いんだよタオイ。行っておいで
挨拶は余計に別れを寂しくするものだよ
タオイ
タオイ
………。


タオイ
タオイ
…分かった。
タオイ
タオイ
じゃあな、白袮
…うん。じゃあね。

















___此処での日々も、本当の意味で、終わる。

模して作ったものも、何故か元々あったものも、
皆が残していったものも、全部、全部消える。

きっとあと一歩踏み出す頃には名残惜しくなる。



…本当は、此処アルスエリアじゃなければ出来る。

けどなんだか懐かしくなって、
部屋を回ってみることにしてみた。



……もう誰も居ない。




少し大きい扉を開いて、アルスエリアを出る。

この扉は、手を離せば自然と閉まっていく。
タオイ
タオイ
(…本当はもう一度、このドアノブを掴みたかった)
そう思いながら手を離す。

ガチャン、と低い音が鳴る。


…もう後戻りは出来ない。




短い廊下を歩いて、角を左に曲がって、左側。

此処はレムスエリア。
確か由来は宝石で………
タオイ
タオイ
(……レインボー…えっと…)
タオイ
タオイ
(レインボームーンライト……か。)
桜にだけ特別「普通」に見える風になっている。

それと、香織の世界と同じ、全部モノクロ。
…正直、楽器までモノクロにするかどうかは迷ったんだけど。

楽器は全部二つずつおいてあるし、
片方モノクロにしたら良いかなとか考えてたな…
タオイ
タオイ
(…懐かしいな。)
そっと扉を閉める。
此処にも、もう来れない。




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