第14話

#13
474
2019/09/21 15:59
薮 宏太
じゃあ、、はい
目の前に差し出された生徒手帳。
薮 宏太
返してあげる
あなた

あ、ありがとうございます

今度は生徒手帳を返してもらうことができた。
薮 宏太
……
あなた

……

《帰りたくないな…》
返してもらった生徒手帳を両手でぎゅっと握る。
薮 宏太
あ、もうこんな時間だ
あなた

えっ

小さなモニターの端に小さく表示されている時間。
あなた

ほんとだ…

22:40と表示されていた。
薮 宏太
そろそろ帰った方がいいんじゃない?
お母さんとか心配すると思うし…
あなた

あ、そ、そうですね…

《帰りたくないけど
薮くんの迷惑になっちゃうし…》
あなた

か、帰ります…

その言葉を発した瞬間、目の前がぼやけた。
あなた

っ……

《泣いちゃダメだ…》
シートベルトを外しゆっくりとドアを開けると
ムワッとした空気が入ってきた。
ゆっくりと地面に足を踏み入れて外に出ると
ムワッとした空気に体が包まれる。
あなた

いろいろと…ありがとうございました

薮 宏太
こちらこそ!また会えてよかった
少しかがんでこちらを覗いてくる薮くんの顔は
あのふにゃっと笑った可愛いらしい笑顔だった。
私も泣きそうな顔で頑張って笑顔を作る。
バタンッと勢いよくドアを閉めると
エンジンがかかる音。
《あぁ、、行っちゃうよ…》
バイバイと笑顔で手を振る薮くん。
私も手を振る。
車が走り出すと同時に一筋の涙が頬をつたった。
どんどん遠くなっていく車。
車が見えなくなるまで
私は涙を流しながら手を振り続けた。
あなた

ありがとう…薮くん…

《もうこれ以上会えることはないんだ…》
《あんな近くで話すことも
触れることもできないんだ…》
握っていた生徒手帳をぎゅっと握った。







大好きだよ。薮くん。ありがとう。

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