~薮side~
小さな手が俺の左手を握っている。
こんなことしてくるなんて思いもしなかったから
頭の中はプチパニック中。
彼女の方を見ると恥ずかしそうに下を向いていた。
微かに震えている彼女の手。
ぎゅっと小さな手を握ると
彼女は驚いた顔でこっちを見ていた。
また下を向いて、逆の手の拳を強く握っていた。
そんな姿を見るのが辛くて
俺は優しく彼女を抱きしめた。
ふわっと香る香水の匂い。
と言った途端
俺のシャツを力強く握りしめて泣き始めた彼女。
慰めるように優しく頭をポンポンとすると
シャツをより一層強く握ってくる。
素直にシャツを握る力を弱めた彼女が
なんか愛おしくて
俺が逆に強く抱き締めそうになった。
《素直すぎだろ…///》
・
・
・
~数分後~
彼女の声が落ち着いて聞こえないぐらいになった。
耳元で聞こえる小さな声。
ぱっと離すと照れている彼女。
暗くて顔色は分からないけれど
たぶん、真っ赤なんだろうな。
今までの行動が蘇ってきて恥ずかしくなる。
とニコッと笑ってきた。
胸が一瞬きゅっとなった。
元気になったのか少し明るく話す彼女。
勝手に出てきた言葉に俺も驚いていた。
また恥ずかしそうに下を向いてしまった。
勝手に出てきた言葉に焦ってしまって
次の言葉が思いつかない。
助手席のドアを開けると
彼女は驚いた表情でこっちを見ていた。
彼女の手首を掴んで車の方に引き寄せると
彼女は「お願いします」と素直に車に乗った。
彼女の一つ一つの行動に
なんでこんなに
胸が高鳴るんだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。