~まいside~
言われるがまま車に乗り込むと
さっき抱きしめられた時と同じ香りがした。
《薮くんの匂いだ…》
抱きしめられた時のことを思い出しで体が熱くなる。
後ろで優しく声をかてくれた薮くん。
何も無いように振る舞い、席に着いた。
バタンッと勢いよく閉められたドア。
《ん…? ちょっと待てよ…?》
《今座ってる所って…助手席…》
《助手席に座ってるということは…
つまり…隣に薮くんが…》
これからのことを想像すると
心臓が激しく高鳴った。
《え…ど、どうしよう…///
なんで助手席に座ったんだろう///》
焦っていると運転席のドアが開いた。
薮くんが車に乗った瞬間
ふわっと薮くんの香りに包まれる。
《ち、近い…///》
さっきは0cmの距離だったのに
さっきよりもドキドキしている自分がいる。
《意識しちゃってるからかな…///》
ドクンッドクンッと激しく高鳴る心臓を抑えて
落ち着かせようとするけど
一向に落ち着いてくれない。
《ど、どうしよう…///》
不思議そうな顔でこちらを見てる薮くん。
《隣がやなんじゃなくてドキドキしちゃうんだよ…》
少し心配そうな顔で答える薮くん。
エンジンがかかりゆっくりと走り出す車。
見慣れた景色が連なる。
お互い無言で、私は窓から外を覗いていた。
ふと薮くんの方を見るといつ着けたのか分からない
マスクとキャップを被っていた。
《あ、そっか、バレちゃいけないんだもんね》
この状況がバレたら、薮くんはもちろん
JUMPメンバーにも事務所にも迷惑がかかる。
それなのに甘えちゃってる自分が情けなかった。
考え事をしていたら
あっという間に家の前に着いた。
《着いちゃった…》
これでさよならだと思うと
少し寂しい気持ちになってしまう。
ふにゃっと笑う薮くん。
その笑顔にどれだけ虜になったか。
《やだ、やだよ
もうこれ以上会えないかもしれないのに》
下を向いている私に優しく声をかてくれた薮くん。
少しだけでいいから…
もう少しだけいさせてください…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。