あなたside
私たちはまずお兄ちゃんが亡くなった場所に
行ってみた。
やはりそこは廃墟になっていて。
「 …入ってみる? 」
『 いいのかな、 』
「 大丈夫だよ、バレたら一緒に怒られよう 」
背中をジェシーに支えてもらいながら
恐る恐る足を踏み入れる。
大丈夫、私はひとりじゃないから。
『 …だいぶ取り壊されてるからまたよかっ… 』
目に飛び込んだのは壁に飛び散っている血。
さすがにもう茶色く、いや黒くなっていたけど
まるでその瞬間を見たようにお兄ちゃんの
泣き叫ぶ声が聞こえるような気がする。
『 はぁっ、、はぁ、、お兄ちゃん… 』
「 あなたっ!、、ごめん、もう出よう 」
私の足はその場から動けなくて。
そんなことがあるんけないのに
ここから出ていったらまた何かを失ってしまう
気がして。
『 ジェシー…私を置いて帰って?、、 』
「 そんなことできるわけないでしょ。
大丈夫、ここを出ても俺はずっと傍に
いるから。ね? 」
『 私といたらジェシーまでいなくなるよ。
きっとなにか起きちゃう…。
もう失いたくない!、、 』
私の心は限界に達していて立ち上がらせようと
してくれるジェシーの手を振り払う。
涙は出なかった。
一周まわって感情が出なくなってしまった。
やっぱり私はこうやって生きててはいけない。
私のせいで、、
『 私のせいで!
「 あなた、これ俺が昔汚しちゃったやつじゃん 」
『 …え? 』
「 せっかく綺麗だったし賃貸だったのに
絵の具飛ばしちゃって追い出されたのにさ
結局廃墟になってるのかよーっ 」
『 ジェシー、なにいって
「 懐かしいなー! ここが俺の部屋で、ここが
あなたの部屋でさ 」
「 … 」
きっとジェシーなりの優しい行動。
違う記憶にすり替えようとしてくれてる。
でもね、無理だよ…そんな顔して笑わせて
ごめんね、、
?「 …誰がいるの? もしかしてあなた?、 」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。