あなたside
…最近あのお客さん来ないな。
忙しい、、とか?
って何考えてるんだ私!
仕事に集中しないと…。
カランカラン
『 いらっしゃいまs… 』
「 1人ですっ 」
そこには全力で笑うあの人がいた。
帽子にマスク、と怪しげな格好をしている。
『 いらっしゃいませ、注文がお決まりに
なられましたらお呼びください。
失礼します 』
「 あっ!…のっ… 」
『 はい、お決まりでしたら伺います 』
「 じゃなくて、俺のこと覚えてる? 」
『 …すみませんが私語は控えさせて
いただいておりますので、では 』
はぁー、、びっくりした。
なんかあの人心臓に悪い、、
見ただけで笑顔になりそうで怖い。
私は笑わない。笑っちゃいけない人だから。
「 すみませーん 」
『 はい 』
「 これとこれで 」
『 かしこまりました。
ごゆっくりお過ごしください 』
「 あのっ、、 」
『 …今度はなんですか 』
「 俺…待ってるから…さ、仕事終わったら
あってほしい 」
『 検討はしときます… 』
「 ほんとに?!よっしゃああああ 」
『 店内ではお静かにお願いします、、 』
「 はーいっ笑 」
この人はなんて無邪気に笑うのだろう。
きっと、なんの苦労もしてないんだろうな、、
なんて思いながらできたものを運ぶ。
『 お待たせ致しました。…と…です。
ゆっくりお過ごしくださいませ 』
彼が頼んだのは甘いケーキとほろ苦いコーヒー。
まるで私たちみたい
いやいや何言ってるの自分、ちゃんと自分をもて。
『 お疲れ様でした、お先です 』
店長「 はーい、お疲れ様 」
仕事が終わった。
今日はいつもより遅くて疲れた気がする、、
うわ、もう22:00すぎてるじゃん。
『 さすがにあの人いるわけない…よね? 』
そう思いながら万が一のことを考えて
その人が渡してきた住所に行く。
『 え、、なんでいるんですか 』
「 ん、、?あ、店員さん!!! 」
『 っばかじゃないですか?!
なんで待ってるんですか、こんなにも
冷えてっ…! 』
私は彼がずっと握っていた手に触れる。
すごく冷たかった。
こんなに長い間夜の外にいたんだ、当たり前だろう。
『 こうでもしないと店員さんと話せない
でしょ?笑 俺待つの得意だからさっ 』
『 ……うち、来てください 』
「 、、へ? 」
『 風邪、ひかれると困るので。
来ないんですか、行きますよ? 』
私はわざと振り返らずにスタスタと歩いていく。
そう、この時はこの人がどんな人かなんて
知らなかったから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。