ふと、母を斬った時の感触が手に戻った。
自分でも分かるほど、不自然な笑顔になってしまった。
すると、冨岡さんは私に近づいたと思うと、私を抱きしめた。
私は、急に抱きしめられ、驚きと恥ずかしさで頭が混乱した。
返事しかできなかった。
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冨岡side
俺は、少女が鬼に攻撃されそうになっているのを見つけ、助けようとしていた。
急いだが、この距離では間に合わないことは分かっていた。
次の瞬間、目の前で起こった事に自分の目を疑った。
そこには、一瞬で隣にいた隊員の刀を取り、鬼を斬った少女の姿があった。
少女は、鬼を斬ったあと、後悔したように、死んだ鬼に近づいた。
鬼がどんどん崩れる。
やがて鬼は消えて、着物だけが残ってから、俺はその少女に近づいた。
少女が顔を上げた瞬間、俺は不覚にも驚いてしまった。
驚いたというよりも、恋に落ちたという方が正しいのかもしれない……
つづく…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!