冨岡義勇side
鬼の言葉を聞いたあなたは、俺が今まで見たこともないほど怒っていた。
ドンッ!!!!
鬼が消え、俺はあなたに駆け寄った。
呼吸が荒い。
その中でも、全集中の呼吸で止血をしているので、すごいなと思った。
俺が薬を手渡すが、あなたは咳き込んで飲めなかった。
その姿を見るだけで痛々しい。
俺は、居ても立っても居られなくなり、口に薬を含んだ。
噛み砕くと、一瞬の躊躇いを捨てて、あなたに口移しした。
唇を離し、あなたの真っ赤になってる姿を見て、我にかえる。
あなたの唇の端から、少し薬が垂れているのを見て、ドキッとした。
そして、俺はあなたを背負った。
一様、この薬は直ぐに効くと胡蝶が言ってたと思うが……
あなたは、寝息を立てていた。
空を見上げると、星が綺麗だった。
こうしてあなたを背負うと、あなたと出会った日のことを思い出す。
あの時も、俺が背負うとあなたは直ぐに寝てしまった。
すると、寝ていると思っていたあなたが呟いた。
耳元で呟かれて、少しくすぐったい。
俺は、驚いて、あなたを背負う手を少し緩めて、あなたの方を見た。
あなたは、寝息を立てて、すやすやと寝ていた。
胸が高鳴った。
寝言だと分かっていても、嬉しい……
クスッと笑うと、走る速度を上げた。
つづく…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。