そう呟いた私の周りは暗闇。空には星が一つだけあるだけでは、充分な光にはならない。
…普通の人間、ならね。
私は普通なんかじゃないから。
「吸血鬼」を普通だなんて言えないでしょ?
私は寝ている二人にそう言い、手紙を軽く書いて机の上に置いた。
窓を静かに開けて、体を窓に押し入れる。
吸血鬼の証であるこの羽…否、私の羽は「羽」とは言えないかな。お姉様とは違う、宝石の付いた羽。
私は羽をパタパタ、と動かし、そのまま闇夜に消えていった。
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あの頃からハンター試験会場を探し始めて数時間後。私は日の出の頃にやっと試験会場を見つけた。と言っても…会話をちょーっと盗み聞きして大体の事を把握しただけだけどね?
この美味しそうな匂いのするお店…ヤキニク?って言うらしい。そのお店にドアを開けて入る。私が入ると定員さんが直ぐに私の元へ駆け寄る。
私はさっき聞いた事を思い出しながら店員さんに言った。気の所為なのか、店員さんの口元がニヤリ、と笑った気がした。
少しの沈黙の後、私に向かってこう言う。
そう言うと、店員さんは直ぐに他のお客さんの元へ行く。
これ、間違えてたら私がお金払わないと行けないんだよね…?
合ってると良いなぁ…取り敢えず、奥の部屋へ行かなきゃ。
奥の部屋に入ると、そこは少し狭い部屋だった。…これ、本当に心配になってきた…
私が椅子に座った途端、ガタン、と部屋が動き出す。
えっ?!何?!
あー、良かったぁ…
お腹空いた…お肉食べようにも、血、入ってないし…よし、着いたら誰かに吸わせてもらおっと!
ぼーっ、としながら椅子に座っていると、チン、と音が鳴って、それからドアが開いた。
わー、凄い人…!此処だったら美味しそうな人、見つかるかな。
…何なのこの人達。
もし私が死にかけでもぜぇーったい命乞いなんかしないもんね!こんな人達に命乞いする位なら死んだ方がマシだよ!
それに、私の方がこの人達よりも強い自信あるし。見るからに弱そう…
人の事馬鹿にして生きてきてるから弱いんじゃないの?そういう人はちっとも強くなれないから。今までの経験でそんな人達、沢山見てきた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。