第5話

すき、だいすき
私は幼い頃から自分が置かれた環境を理解してきたつもりだった。
そのため、小·中·高と女子校へ通い、自分の命をおびやかす人との関わりを限りなくってきた。
とはいえ、これから社会に出た時のために、大学だけは共学へと自ら進路をそれたのだ。
そこで、同じサークルのひとつ上の先輩に優しくされて··········
免疫のなかった私は、あっさりと心惹かれてしまった。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
先輩、このストラップ、うさぎなんですか?
彼のリュックに女の子が好みそうなマスコットが揺れていて。
先輩
先輩
うんうん。可愛いよね。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
はい、とっても。
先輩
先輩
彼女がプレゼントしてくれたんだ。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
彼·····じょ·····?
次の瞬間、ジクンと針が刺さったような感覚が身体中を駆け巡る。あ、やばい。と悟った時には、もう遅い。
先輩
先輩
あまり好みじゃないけど、本人、めっちゃ推して来るからさ。仕方なく付けたよ。そしたら意外と可愛いかった笑
そこから、どうやって先輩との会話を切り上げたのか、覚えていない。
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花っ··········!
気がつくと、彼の腕の中だった。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
ごめん··········もう無理かも。足がっ···············足からすごく痛みがきてっ·····
あぁ、こうなることをずっと恐れていたのに。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
どうして、消えないのっ?泡にならないのっ?
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花っ··········、しっかりしろ。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
痛い·····足がっ·····はっ·····ぁ
このままいっそ、消えてしまいたい。
そう思うほどに足が痛い。
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花、よく聞け。これは、予想だけど··········
みじかく、息を吐いた。
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花は、消えないと思う。
_______________彼の言葉はこうだ。
私は確かに先輩に好意を寄せていて、失恋をしてしまった。だが、私は好意を『寄せていた』だけ。
つまり、完全に恋をしていない。
だから中途半端に魔法呪いの効力がまわってしまった。
不完全な恋により、十分にその魔力が発揮されない。ということは、だ。
私にはまだ、可能性がある。
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花、俺じゃだめか。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
どういうっ·····こと··········
涼(りょう)
涼(りょう)
ずっと、好きだった。でも、柊花のために、柊花の幸せのために、隠してきたんだ。
涼(りょう)
涼(りょう)
だけどっ
涼(りょう)
涼(りょう)
このままじゃ、柊花があぶない。俺じゃ、だめか?柊花をっ、柊花を守るから。こんな悲しい思いをさせたりしないからっ。
背中に回した手が、強くなった。
私の足を少し浮かせるように、数センチほど、持ち上げてくれているのだ。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
涼··········
不意に、思い起こされる記憶。
この人は、いつだって私の隣にいてくれた。
泣いていた時、手を握ってくれた。
いつも、いつも優しくて··········。
そんなことを考えると、ふっと和らぐ痛み。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
··········えっ
私は、私も、彼に恋をしていたのだろう。
これが、ほんとうの恋ならば_______________
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
涼、私もすき。だいすき。
彼となら、私は生きていけるかもしれない。