第6話

壊さないで
まるで、ジェンガのような。



私はぐらぐら揺れる積み上げられたものであって、なにかひとつでも抜かれてしまったら、簡単に崩れ落ちちゃいそうなほどもろい。



それを彼の手でまもってくれている。


足の先から始まった痛みは、いまや身体の大部分を攻撃していた。


たぶんきっと、毒ヘビ噛まれた時のように、噛まれた傷は消えても、解毒げどくできないということ。


徐々に身体の自由が、その毒により、支配されている。時間に比例してそれは濃くなっていき、彼がくれる愛情でさえも無力化してしまう。



実際、自分の足で歩くことはおろか、入浴や着衣さえ厳しい。この間まで出来ていたことが、徐々に、出来なくなっていく。


いつか、涼が言った。
涼(りょう)
涼(りょう)
この先には、何があるんだろう
「この先」が、どこを指しているのかは明確に理解できなかった。私は彼を見つめた。
涼(りょう)
涼(りょう)
きっと、柊花はこの先も痛いままだ
涼(りょう)
涼(りょう)
俺は柊花を救いきれていない
声には熱がこもっている。彼自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
涼(りょう)
涼(りょう)
俺がいなくても、柊花なら生きていける
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
それはわからない
涼(りょう)
涼(りょう)
生きていけるよ。いつかは、そんな日が来る
青年には似合わない複雑な横顔をして、黒い光沢こうたくを放つ瞳から、涙が流れた。その表情は私よりも、よっぽど傷ついているように思える。 



彼自身もそれを受け入れているようだった。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
どうしてそんなことを言うの。私、涼といられて、シアワセだよ
その言葉に、嘘はなかった。彼がいなかったらとっくに魔法呪いが私を殺していた。


それを止めてくれているのは、私に対する彼の思いのおかげ。彼の愛情によって、私は生かされている。私も、彼がすきだった。



涼はうつむきがちに首を振る。
涼(りょう)
涼(りょう)
柊花、君は強い。でも、俺がいると急に弱くなる。すぐにでも壊れそうに見える
それでも私のそばにいたいんだ_______________と。
愛。
自由。
欲望。
呪いのようなことばと、戦い続ける彼がいた。
どれも選びきれなくて、何ひとつ失いたくなくて、泣いている。もがいている。
それが彼の身を圧迫していることを、わたしは気づいていた。
低くざらつき、掠れた声で涼は言う。
涼(りょう)
涼(りょう)
ごめんな
彼はいつも、私に謝っていた。
涼(りょう)
涼(りょう)
俺は、君を手放すのがいちばんこわい
身体中に傷を背負っているのは、私だけではないのだと、私はその時はじめて知った。
_______________彼は、心を、怪我している。
そっと彼から目線をそらした。