第3話

知りたくなかった
里奈(りな)
里奈(りな)
久しぶり·····だね
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
久しぶり
一年ぶりだった。私がこんな身体になってしまってからは、大学へ通うことが困難になったから。
里奈はわたしの車椅子に目を落とすと、憐れむように微笑む。
私はしばらく、外へ出ていなかった。



ひと前に出たらどうしてこんなこと車椅子になったのか必ず聞かれてしまう。
その時、私の生い立ちを説明したところで、厨二病をこじらせたと思われて終わり。
それで、おっくうになってしまって。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
外、寒かったよね。あがって。
里奈(りな)
里奈(りな)
いい
短く、吐き捨てるように言った。
里奈(りな)
里奈(りな)
本当かどうか確かめに来ただけだし
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
確かめるって·····私、里奈にメールしたよね。事情を話したよね。
メッセンジャーアプリじゃなくて、メール。
彼女も了承したような言葉と、いたわりを文章にして送ってくれたというのに。
いま、目の前にいる彼女は黒い瞳を尖らせていて。まるで、そのまま私を貫き通そうとするようなほど敵意が滲んでいる。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
じゃあ、どうして
里奈(りな)
里奈(りな)
いつまで、涼の善意に漬け込むつもり?
ぜんい。
里奈(りな)
里奈(りな)
家事もやらせてるって聞いた。
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
やらせてるって、そんな言い方·····
里奈(りな)
里奈(りな)
だってそうでしょ
里奈からしたら、ううん、周りから見たら、そうとしか見えないのかもしれない。
今は。 


今はしてもらうばかりだけど。
この距離をどうにかしたくても、どうにもならない歯がゆさを、私は、不甲斐なく思ってる。


自分の運命を、呪っている。
凍傷した両足を強く縛り付けるような心地を、あなたは味わったことがないでしょう。
絶望の中、手を差し伸べてくれた彼の温かさを、知らないでしょう。
里奈(りな)
里奈(りな)
あたし、あんたに生まれたかった
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
私だって、普通に生まれたかった
怒り、そんなものはとっくに通り過ぎていた。
里奈(りな)
里奈(りな)
かわいそうなヒロインになって、彼に大切にされて
目の前にいる彼女に、私の言葉は何ひとつ響かないと思う。
里奈(りな)
里奈(りな)
あんたなんか消えちゃえばいい
柊花(しゅうか)
柊花(しゅうか)
っ··········
かつて笑いあった彼女は、里奈は、ここにもう居ない。
つり上がった眉とは対称的に、目じりが下がりそこに雫が浮かんでいた。
驚くほど感情的な言葉を彼女は、上手くコントロールできないのだと思う。ただ、私が憎くて仕方がないから。
里奈が、涼に好意を抱いていた事は気づいてた。
それでも、彼女の変化は悲しい。
里奈(りな)
里奈(りな)
あんたはね、涼の自由を奪ってるんだよ_______________