第2話

思い出
89
2018/09/06 07:10
「変な髪~!みんなそんな色してねぇぞ!
仲間外れだ!」
大柄な男の子が、私を指差して笑った。
周りの男の子たちも、一緒になって囃し立てた。
悔しかった。
人に向かってそんなことを言うこの人達も、理解できない。
でも。それに対して何も言い返せない、弱虫な自分が情けなくて、大嫌いだ。
目頭が熱くなって、溢れた涙が私の頬に筋をつくる。

「お前らの目は節穴か」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは、レオだった。
「その役立たずな目見開いてよーく見ろ。
俺の髪もこいつと同じ金髪だろ。
仲間外れもクソもねぇよ」
レオは静かに歩いてきて、私を庇うように、私の前に立った。
「あぁ?んだテメェ偉そうに!
だったらお前ら二人とも仲間外れだろーが!」
「二人仲良く仲間外れってか。
そりゃあ願ったりだな。お前らの仲間なんかこっちから願い下げだ。
生憎、無能と楽しくお遊びできるほど、おめでたい頭じゃないんでね」
「なっ…!このっ!」
レオの言葉に、男の子達は怒りで顔を真っ赤にする。
彼は拳を振り上げ、レオに殴りかかった。

パシッ、と音を立てて、振り上げられた拳は、レオの片手に受け止められた。
レオは男の子の手を掴んだまま、男の子が殴りかかってきた勢いを利用し、そのまま投げ飛ばした。
男の子が小さくうめき声をあげる。

「武道ってのは、力ずくで人を従わせるために使うんじゃねぇ。護りたいやつのために使うんだ」
行くぞ、と言って、レオが私の腕を掴む。
男の子達がレオに罵声を浴びせていたが、レオは気に止める様子もなく早足で歩いた。

家に向かう小道。
いつも通り、人通りは少ない。
私は溢れてくる涙を手で拭って、まだ鼻をすすっていた。
「ったく…中学生にもなって、あんな雑魚に絡まれんなよな」
「えへへ…ごめんね」
レオは私の手を握りしめたまま、言った。
「ありがとう、だろ」
私はレオのその言葉が、どうしようもなく嬉しくて、むず痒くて。
レオの手を強く握り返した。
「うん。ありがとう」

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