「変な髪~!みんなそんな色してねぇぞ!
仲間外れだ!」
大柄な男の子が、私を指差して笑った。
周りの男の子たちも、一緒になって囃し立てた。
悔しかった。
人に向かってそんなことを言うこの人達も、理解できない。
でも。それに対して何も言い返せない、弱虫な自分が情けなくて、大嫌いだ。
目頭が熱くなって、溢れた涙が私の頬に筋をつくる。
「お前らの目は節穴か」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは、レオだった。
「その役立たずな目見開いてよーく見ろ。
俺の髪もこいつと同じ金髪だろ。
仲間外れもクソもねぇよ」
レオは静かに歩いてきて、私を庇うように、私の前に立った。
「あぁ?んだテメェ偉そうに!
だったらお前ら二人とも仲間外れだろーが!」
「二人仲良く仲間外れってか。
そりゃあ願ったりだな。お前らの仲間なんかこっちから願い下げだ。
生憎、無能と楽しくお遊びできるほど、おめでたい頭じゃないんでね」
「なっ…!このっ!」
レオの言葉に、男の子達は怒りで顔を真っ赤にする。
彼は拳を振り上げ、レオに殴りかかった。
パシッ、と音を立てて、振り上げられた拳は、レオの片手に受け止められた。
レオは男の子の手を掴んだまま、男の子が殴りかかってきた勢いを利用し、そのまま投げ飛ばした。
男の子が小さくうめき声をあげる。
「武道ってのは、力ずくで人を従わせるために使うんじゃねぇ。護りたいやつのために使うんだ」
行くぞ、と言って、レオが私の腕を掴む。
男の子達がレオに罵声を浴びせていたが、レオは気に止める様子もなく早足で歩いた。
家に向かう小道。
いつも通り、人通りは少ない。
私は溢れてくる涙を手で拭って、まだ鼻をすすっていた。
「ったく…中学生にもなって、あんな雑魚に絡まれんなよな」
「えへへ…ごめんね」
レオは私の手を握りしめたまま、言った。
「ありがとう、だろ」
私はレオのその言葉が、どうしようもなく嬉しくて、むず痒くて。
レオの手を強く握り返した。
「うん。ありがとう」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。