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第1話

prologue
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2019/04/27 07:04
新木あらき馬亊まことさんですか?」
『はい、そうです』
「どうぞ入ってください」
病院に着いてすぐ、看護師さんに案内されて、病室へ入った。
入ってすぐに見えた彼女は、ひどく顔が真っ青で、息もしていなかった。
看護師さんに、「手を握ってあげてください」と言われて、彼女の前に座ると、苦しそうだけど、彼女は弱々しくこう言った。
「馬亊…夜遅くに来てもらって…ごめんね」
『大丈夫、お前はもう少し楽にしろ』
「ありがとう…長く生きられなくてごめんね」
『…今から死ぬみたいに言うなよ』
「だって…そうかもしれないでしょ」
『先生達が頑張ってるのに、お前がそんなに弱気でどうするんだよ』
「そうだね…ごめん」
『いいけどさ』
「…もっと一緒にいたかったよ」
『俺もだよ』
「馬亊と結婚したかった」
『…そうだな』
「…馬亊」
『ん?』
「…最後まで愛してくれて、ありが…」
その瞬間、彼女は俺の手を離した。

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