屋上に着くと、俺達を出迎えるかのように、ドーンと、大きな花火が打ち上げられていた。
陽葵、よく覚えてるな…
思い出した…
まあ、あれは毎回のように陽葵が泣くからなんだけどな…
今しかない。今言うんだ。
陽葵がゆっくりと振り返った。
言い終えた瞬間、タイミングを狙っていたかのように、大きな花火が打ち上がった。
俺の言葉を聞いて、陽葵が俯いた。
鮮やかな花火に彩られた、陽葵の顔は、いつもより大人びて見えた。
ああ、このままずっと、二人で花火を見ていられたらいいのに…
陽葵を見ると、…泣いていた。
俺は、陽葵を抱き締めた。
俺は、陽葵を抱き締める両手の力を強めた。
陽葵は、一瞬驚いた後、いつもの笑顔で笑った。
ピピピピ、ピピピピ。
空を見ると、花火もそろそろクライマックスのようだった。
陽葵が上目遣いで俺を見た。
陽葵は、俯きながら口ごもる。
チラッと見えた顔は、少し赤くなっていた。
陽葵からこんなことを言うなんて、想像もしなかった。
陽葵がゆっくりと目を閉じた。
俺は、陽葵の顎に手を当て、自分の顔を近付けていき…唇と唇を重ねた。
それから、ゆっくりと顔を離した。
陽葵は、やはり俯きながら、そう言った。
俺も陽葵も、あえて触れなかったけど、お互いの顔は、真っ赤だった。
俺達は、手を繋いで病室へ戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。