凛々side
ん…?
なんか一瞬寒気がしたんだけど。
誰かが私の話でもしてるのかな…
私は、早乙女凛々。
みなさんは、私が戸羽遼太郎と話している所を見たことがないでしょう。
それは過去に…ひどい出来事があったから。
あれは、2年ほど前のこと…
この日は、偶然新木くんと帰り道に遭遇して、一緒に帰った。
…というよりは、私が新木くんを先に見つけて、追いかけたんだけどね。
当時の私は、新木くんのことが好きだった。
今はもう陽葵で手一杯ってことを知ってるし、諦めたけど。
私が後ろを振り返ると…
そこに、当時の戸羽くんがいた。
金髪で、ちょっとロングな髪を後ろで結んでいて、学ランの中には、「喧嘩上等!」って書かれた赤いTシャツを着ていて。
theヤンキーって感じのその容姿に、私は言葉が出なかった。
話す口調も今とは全然違って、私は少しずつ離れながら、答えた。
ああ、チャラさ加減は今も全然変わってないけど。
すぐ「可愛い」って言うし。
私は、出来るだけ戸羽くんを睨んだ。
そう言って、戸羽くんは、近くの壁をドンッと叩いた。
いわゆる壁ドンだ。
そう言うと…戸羽くんは、私に顔を近づけてきた。
私は…戸羽くんの唇が一瞬触れたような気がした。
その瞬間。
ゴンッ。
新木くん…!
戸羽くんは、なぜか言葉を呑んだ。
新木くんは、戸羽くんを見下ろすようにして言った。
戸羽くんは、そう言って、走り去って行った。
いや、なんで私よ。
私は、腰が抜けて、倒れそうになった。
私は思わず、新木くんに抱きついた。
新木くんは、何も聞かずに私を抱き止めてくれた。
私は、強がってただけで、本当は怖かった。
だから、私のファーストキスは…戸羽くんに奪われた。
戸羽くんはファーストじゃないと思うけど。
私は、ヤンキーじゃなくなった今でも、戸羽くんのことは許せない。
また、いつ気付かれるのかって、ずっと怯えてる。
もうあんなこと、絶対しないでほしいよ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。