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ジアンは私から離れようと、もがく
それでも私はジアンの腕を掴んで離さない
バッ
ついに、ジアンの腕は私の手から離れてしまった
その瞬間、ぽつぽつと空から雨が落ちてくる
そう叫ぶジアンの顔は向こうを向いていて、
私からは見えない
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静かにそう言い残して、ジアンは走って行った
私は、ただその場で立ち尽くす
いつの間にか、雨が強くなっていた
気づいた時には、土砂降りで
温かいものが、頬を伝い
空から落ちる冷たい雨と、自分の涙が混じる
誰も居なくなった体育倉庫の前で、
ただひたすら、声の無い悲鳴をあげた
息が出来ているのかどうかも分からない程
雨に息の音を掻き消されて
空が私と一緒に泣いてくれているような気がした
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。