…どうしよう。
まだ寝てる平野さんの寝顔を見つめながら
悩む。
これは、起こすべき?
いや…迷惑かけておきながら起こすなんて…
ねぇ?
なんだか悪い気が…。
恐る恐る平野さんの眠るソファーに
近づいていこうとしたその時
寝返りした。
やっぱり寝苦しかったかな…、
悪いことしたな…。
パッと目を開けると
おもむろに体を起こして
昨日と同じように優しい笑顔を私に向けた。
な、何て優しい人なんだろう。
知り合ったばかりの私に
こんなにしてくれるなんて…
それに笑顔で。
迷惑掛けっぱなしだし。
友達とかではないから、
余計なんだか気が引けてしまう。
パタン、とドアが閉められる音がした途端
ドッと緊張が解けた。
おかしいな。
昨日は普通に話せてたはずなのに
今はなんかドキドキ。
寝てリセットされたの!?
てかもう、
何で迷惑かけて
泊まらせてもらってるのに
更に送ってもらうことになってるの…
私のバカ…。あの時寝なければ…。
ソワソワ。落ち着かなくて
部屋中うろちょろしていると
ガチャッとドアの開閉音と共に
白いTシャツを着た平野さんが…。
シャワーを浴びてきたのか若干湿った感じが
何だか妙に色っぽくてクラクラしてくる。
そんな私を不思議そうに
覗きこむようにして見てくる平野さん。
ち、近い!!!
鼓動がまた速くなって
とりあえず離れよう!と思ったその時
側にあった自分の鞄につまずいた。
ドサッと音がして背中に感じる柔らかい感触。
想像していた痛みは一切ない。
え…何?
目の前には、ドアップで映る平野さんの顔。
え…。
あ、助けてくれたんだ。
でも、この状況は何!?
ベッドの上。しかも、
私の上に覆い被さるように…平野さんが。
ドキドキドキドキ。
何でじっと見つめてくるの?
私、何か変なのかな、何かついてるとか?
ずっと目を離すことなく私を見つめてくる
平野さんに耐えきれなくなって
思わず目をつむった。
瞬間、唇に温かいものが当てられて
目を見開いた。
…な…
何でキス!?
どういうこと?
私、遊ばれてる?
ふぁ、ファーストキス…だったのに。
帰したく…ない…。
それって…
わ…私???
ひ、一目惚れって
こんな、私なんかに…
こんなカッコイイ人が…。
平野さんは少し顔を赤く染めながら
ニコッと微笑んで、
ギュッと優しく私を抱きしめた。
平野さんの体温が温かくて
なんだか幸せな気持ちになって
この人と付き合いたい、って思えた。
後悔なんて絶対しない。
会ったばかりだし、
まだお互い何にもしらない状態だけど
これからもっと、知っていけばいいよね…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。