兄のほくの家を出て
駅の近くのマンションに引っ越した
引っ越してからわかったのは
彼の学校が見えることと
あの日出たシェアハウスから少し近いこと
もし、みんなが私を探してくれていたら
なんて図々しいんだって思うけど
また、お友達に戻れたらいいなと今日も夢を見る
そしてあわよくば
大好きな人と憧れの関係になれたらなんて思う
未だに高校生を見れば金髪を探し
重そうなリュックを背負ったオシャレな人を見ると
心臓が大きな音を立てる
関西弁が聞こえると振り返ってしまうし
雨の日は傘を持った彼を待っている
タピオカ屋さんを見れば彼は知っているか気になるし
キッチンに立っていると隣が寂しいし
酷く傷つけてしまった君の事が心配で心配で仕方ない
彼はもう寝坊して慌てていないだろうかと気になるし
優しい彼は自分を責めていないだろうかと心配だ
見事に未練タラタラなのだ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。