『私じゃダメなの?』
「そんなん言ってへんやん!」
『言ったよ!』
「え、俺なんもしてへんやん!」
『気づいてないの?』
「なに?」
『もういい。ちょっと出てくる。』
「は!?待ってや!」
バタン…
……こんなはずちゃうかったのに。
俺が「あーぁあ。那須のほうがちゃんと聞いてくれるのになー」って言ったら、あなたが怒っちゃって。
今は6時半。この時期やから、もう真っ暗なんちゃうかな?
「あーー、やっば。ほんまやらかした。」
頭を抱えて、まじで反省してる。
「どこ行ったんやろ。あ、」
こんなときは、みっちーに電話や。
プルルル…
[もしもーし、]
「みっちーみっちーみっちー!」
[なんや、長尾。]
「あなたが出てった。」
[は?おま、何してん?!]
「それが、分からんのよ」
[分からんことないやろ?思い当たるのは?]
「ん〜〜…那須のほうがわかってくれるって言った。」
[…それ、あなたちゃん、那須のこと女の子やと思ってるんちゃう?]
「え?そーなん?」
[やって、長尾のクラス、那須さんっておったよな?]
「…おるわ。」
[絶対それや!はよ謝り。]
「どこおるんか分からんもん。」
[そんなん…走って探せ!!]
ブチッ
そっか…謝らんと。
適当に上着羽織って、ポケットにスマホ突っ込んで家を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!