第141話

【西村拓哉】バレンタインの糖度
7,136
2022/02/14 12:00



" 今年は何個チョコ貰えるかな "


ここ数日の男子たちはこの話題で盛り上がってる。
それは私の彼氏である拓哉くんも例外ではなく。


[西村去年30個貰ったんやっけ?]


「まー、そんくらい?」


[うわぁー、えぇなぁ。しかも彼女ちゃんからの本命も貰えるんやろ?西村幸せ者すぎるやろ…]




……




2/14、バレンタイン当日。
前日に作ったチョコ味のマカロン。
お菓子作りを頻繁にしない私だけど、何回も上手くできるまで練習して、がんばってつくった。
ものの、


『はぁ、』



[わ、今年も凄いね、、なんなら去年以上じゃない?]



拓哉くんの机の上には大量の可愛らしいお菓子、そして周りには女の子たち。

こんな状況で、あげれそうにもない。










結局、そのまま放課後になってしまった。


" ちょっと帰るの遅れるから先帰っててもええよ。"


"んーん。待ってる。"


そんな軽い会話をして教室を出ていった拓哉くん。
きっと告白。
前日まであんなに楽しみだったバレンタインなのに今は全然楽しくない。

あんなにチョコ貰ってて、きっとたくさん告白もされてて、全部断ってるのかな…?
可愛い子に告白されたらそっち選ぶんかな?
そしたら、私…振られるのかな…?
考えたくもない負の連鎖がぐるぐるして、涙が出そうになって…



「え、…あなた、泣いてるん?」



『たくや、くん』



「え、なんかあった?どうしたん?」



『…いっぱい、チョコもらってるの見たら、なんか、』



「…やきもち、妬いてくれたん?」



『……そうかも、』



「、あなた……」



モヤモヤが拓哉くんに抱きしめられてると、すっと溶けていくようで。



「直接渡しに来てくれたやつは全部断ったし、置いてあったやつも友達と分けてん。」



『…断ってくれたの?』



「当たり前やんか。こんな可愛い彼女おって他のはいらんわ。」



そう言うと、拓哉くんは前髪を崩さない程度に頭を撫でてきた。
柔らかく笑う彼はとっても優しくて。



「…なぁ、あなたからのはないん?」



『ん?』



「チョコ」



あっ、……あげること、すっかり忘れてた。
拓哉くんの腕を解いて小さな箱を取り出す。



『これ…』



「あけていい?」



『うん、』



「…マカロン?」



『うん、好き?』



「……なぁ、これお菓子の意味考えて作ってくれたん?」



『っ、……ぅん』



隠して、渡すつもりだったのに…。

" あなたの存在は大切 "

口に出すのが苦手な私は、こういう伝え方しか出来なくて。



「…なぁ、ちょっと今から時間ある?」



『ある、けど…』



「お礼させて。今から俺ん家行こ。」











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