「あなた〜」
『なーにー』
「ノート見せて」
『嫌ですぅ』
「いいじゃん!」
後ろの席の幼馴染 西村拓哉 との会話。
いつもの "ノート見せて" から始まるだる絡み。
授業中ずっと寝てるから、休み時間になると必ずと言っていいほど聞いてくる。
それでも毎回後ろからヒョイっとノートを奪われる。
『あっ、ちょっと取んないで!』
「あなたさぁ、落書きすんのやめたほうええで?」
『ちょっと!見せびらかさなくていい!』
ちょうど落書きしたページをこっちに見せてくる。
『勝手に見てんのはそっちでしょ!』
〈ほんっと、仲いいよね。そこの幼馴染ペア〉
「『そんなことないから!』」
〈へいへーい、〉
ほんとは違う。
昔から拓哉のことが好き。
私だって出来るんだったら、告白したい。
でも もし、" 失敗 " したら。
そう考えると怖くて、言えない。
「あなたー、帰ろー」
『はーい』
家が隣だから登校も下校も一緒。
「あなたはさ、好きな人とかいないの?」
『はっ!?何、いきなり』
ほんとに、何、急に!って感じなんですけど。
「いやぁ、さ。気になるじゃん。」
「で、いるの?いないの?」
『そりゃぁ、…いるけど。』
「おんの!?え、だれだれ!」
『言うわけないでしょ!バカ!』
恥ずかしすぎて、走って逃げる。
「ちょ、ごめんごめん!」
拓哉が追いかけてくる。
『追いかけてこないでよ!』
「ね、ほんとに!機嫌なおして!」
「てかさ、好きな人いるんやったら告れば?」
『簡単に告るとか言わないでよ!』
「だって、告られてイヤな男、いないよ?」
イヤな人いないって…じゃあ、私が告白しても…
いやいや!この雰囲気耐えきれないっ
『っ…、、た、拓哉は、いないの?好きな人』
「え〜、俺は…いるよ?」
…いる、んだ。
『へ、ぇーそうなんだ!』
「でさぁ、女子のあなたに聞きたいんやけど、」
『え、ぇ?何なに?』
「もし。…もしだよ?自分が、男として見てない相手に、、告白、されたら…どう思う?」
ズキっと胸が痛む。
気を抜くと今すぐにでも涙が出てきそうだから、必死に笑顔を作って
『ん〜、嬉しいは嬉しいんじゃないかな〜なんて。笑』
なんで、好きな人の恋応援してんだろ。
自分が嫌になってくる。
涙が溢れそうになったとき、拓哉が口を開いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。