まだひんやりとした風が吹く中、卒業式が行われた。
彼氏の大西流星くんは3年生だから、今日でこの学校を卒業する。
卒業式が終わって卒業生がほとんどいなくなった校庭。
2人でまだ花の咲いていない桜の木の下にいる。
『流星くんっ』
「…あなたちゃん」
『お別れ、だね。』
「え?」
『だって、私まだ高校生だし…』
「僕がいつ、高校卒業したら別れるって言うたん?」
『だって、、、っうぅ』
「あーぁー、泣かんとって?僕せっかく卒業式泣くの我慢したのに、あなたが泣くともらい泣きしてしまうやろ?」
『っうん、、』
「僕は、卒業してもずっといっしょにおりたい。やから、あなたと別れへん。」
『ほん、とに?』
「ほんまやよ」
『絶対だよ、』
「…今言うわ。あなたちゃんが卒業したらいっしょに暮らそ。同棲したい。」
『…っうん。流星くんといっしょにいたい。』
「ちゃんと、学校がんばり?」
『流星くんと同じ大学行けるように』
「約束、な?」
指切りをして、触れるだけの優しいキスをした。
…
なんて会話をした日からもう1年。
私もこの学校を卒業した。
去年、話した木の下を眺めながら、学校を後にする。
そして、……流星くんの家に向かう。
ピンポーン、
「はーぃ、」
『流星くんっ!』
出てきた途端、抱きついた。
「あなたちゃんっ!卒業おめでとうっ」
『ありがとう』
家の中に入る。
流星くんは、今一人暮らしをしている。
何度も訪れた流星くん家。
『あのねっ、わたし、卒業したんだよっ』
「うん。」
『だから、、だからっ』
「約束、やろ?いっしょに暮らそっ」
『やったぁ!』
長くて甘いキスをした。
2人で喜びあって、微笑みあった、卒業の日。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。