楽屋で撮影の休憩中、あなたから電話がかかってきた。
「もしもし、?」
『あ…れん、?』
「どしたん?」
声だけで分かる。
あきらかにいつもと違う。
『っ、あっつい…』
「熱あるん?!」
『わかんない…』
「ちょ、できるだけ早くあなたん家行くから、待っとって、?」
『分かった、……』
撮影なんか巻いてまいて、すぐに終わした。
あなたが心配で心配でたまらん。
マネージャーに近くまで送ってもらって、あなたの家の近くのコンビニ寄って、ゼリーとか水とか必要なもの買って、走ってあなたのもとへ走る。
チャイムなんか押さず、合鍵で家に入る。
「あなたっ、大丈夫っ?」
寝室に入ると、ぐったりと横になっているあなたがいた。
『…ん、、、れん、?』
「せやで? 熱は?」
『測ってない。』
「どににあんの?」
『そこの棚の2段目。』
「はい、。」
体温計を渡すと、重そうに体を起こす。
ピピピッと音がなると、あなたの脇からさっと体温計をとる。
「うっわ、39度。インフルちゃう?」
『んぅ…』
そっとあなたのおでこに手を当てると、ありえんくらい熱かった。
「あなたは寝とき? お粥作ってくる。」
『や…。行かないで…?』
目をうるっとさせて、弱々しく手をとるのが可愛すぎる。
なんて、病人に言えないけど。
「分かった。じゃあ、ゼリー食べる?」
急いできたから、レジ袋ごとあなたの部屋に持ってきている。
スプーンも貰ってきたからここで食べられる。
『食べたい。』
「ほら、食べ?」
『やだ、食べさせて?』
「もぉ、しゃーないな」
熱があるとあなたは甘えたさんになるんや…
そんな発見は置いといて。
ゼリーを掬ったスプーンをあなたの口に持っていくと、ぱくって食べてくれる。
「ん、おいし?」
『おいしぃ…』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!