開いたドアの方に振り返ると、思わず変な声が出てしまった。
なぜならそこにいたのは、ちょうど今考えていた、その人だったから。
ぺじ先生は悪そうな笑みを浮かべながら、しゃがんで釘打ちをしている私の顔を覗き込む。
「なわけないです!!」と言うべきか、「そりゃしますよ」と言うべきか…。
答えが出なかったので結局スルーという形になってしまった。
そんな会話をしているうちに、最後の釘が打ち終わった。
立ち上がって伸びをした。
気になっていた部分が解決して、スッキリした気分。
まさか、と思ってふと思い出した。
頭の中では「傘」という検索ワードに朝のお兄ちゃんの何気ない一言が引っかかる。
ざーーーー、と大きい音がなり始めた、午後6時半。
窓の外を見ると、大粒の雨。
何でこんなにもツイてないんだろう、と思うくらいの、相当な雨。
何かずぶ濡れ以外の方法はないか、必死で考える。
というかその前に、デフィは大丈夫なのか?
後から、
「一人で帰ってなかったらあんなにずぶぬれになってなかったかも知れないのに!!(謎)」
なんてよく分からない理由で怒られたくはない。(
とりあえず一安心だが…。
人の心配をしている場合じゃないのかもしれない。
お兄ちゃんに電話してみることにしよう、と思ってかけてみる。
そんな事情もあってデフィに溺愛されるようになったのだ、なんて今語るべき話ではない。
う〜ん、こうなったら、どうしようもないけど…
先生が、はぁ〜と、大きなため息をついた。
学校から駅までと、駅から家までをダッシュで走ったら、何とか家までたどり着けるだろう。
電車に乗っている間は車掌さんが私を安全に家の最寄駅まで連れて行ってくれることだし。…
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。