えっ…えぇ…
先輩のこと考えてる時に、いきなり…!?
「あれ、前にもぶつかったよね?」
「!」
覚えて…くれてたの…!?
「はいっあの、すみません2度も…」
私の不注意で…申し訳ない…
「てか、俺の名前よく知ってんね。
健人はこの学校じゃ有名人だけど。」
知ってますよもちろん。
好きな人ですもん。
なんて、言えないけど。
そんなことを心で呟いて、口では何も言えずに黙ってしまう。
こんな私…ダメだなぁ。
「名前、なんてゆーの?」
「えっ
あ、あの、えと、あなた…ですっ」
「じゃ、あなたちゃん。」
わ、バカっ苗字言えばよかった…!
いきなり名前で…
「あのさ、ちょっと頼まれごとしてくれないかな??」
「へ?」
うそ…
「ごめんね、役員の子が今日休んじゃって…」
「いえ、大丈夫ですっ」
むしろ嬉しいです…
何この急展開…
生徒会室で先輩と二人きり…
そう思いながら目の前の書類をホチキスでとめていく。
「ったく、全部俺に押し付けやがって…
今日までだって知ってて遅く出してるだろ…
俺にだけ厳しいんだからーったく…」
…一ノ瀬先輩って、よく喋る人だったんだなぁ〜…
なんか、意外…
「先輩、終わりました…」
「ありがと!
マジでありがと!」
助かった〜と、笑顔になる先輩にまた胸が高鳴った。
「じゃぁ、私はこれで…」
カバンを持って生徒会室のドアに手をかける。
「えっ、待って待って。
もう暗いし送ってくって。」
え。
「ええ!?」
思わず盛大に驚いてしまった。
送る…!?
「あ、いや、彼氏とか待ってたらいいんだけど!!」
「いえ、いないのでっ!
でも、ご迷惑では…?」
「何言ってんの、迷惑じゃないし、むしろ手伝ってもらっちゃって悪いし…」
どうしよ、凄く嬉しい…
「じゃ、じゃあお願いします…」
緊張するよ〜…
「じゃあ俺、この書類職員室に持ってくから下駄箱で待ってて。」
「は、はいっ。」
まだまだ先輩とふたりきりなんて…
心臓、もつかな…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!