先輩に…彼女…?
「片桐先輩に聞いたの。
だから本当だと思う…。」
優梨ちゃんはサッカー部のマネージャーだから片桐先輩とかとよく話すくらい仲良くなった。
だから…
本当のこと…
そんな、じゃあ今まで彼女がいながら私と一緒に帰ってたってこと?
なんで…
ガツンと頭を打たれたような気分だった。
「あなた…?」
心配そうな顔をする優梨ちゃん。
「あ、教えてくれてありがと。
告白、とか考える前に知れてよかった…。」
ホロ、と目から地面に雫が落ちた。
「うっ…っ」
「あなたっ…!」
ぎゅっと優梨ちゃんが抱きしめてくれる。
その胸の中で私は泣き続けた。
私、こんなにも先輩のこと…
文化祭一緒に回りたいなんて…バカみたい。
言わなくてよかった。
よかったじゃん…
「あなた、大丈夫?
これからまた生徒会でしょ?」
「うん…」
このあともまた、文化祭の打ち合わせとか色々しなくちゃいけない。
一ノ瀬先輩に、また会わなきゃいけない…
「でも、大丈夫。
今まで通りに振る舞えるから。
ありがと、心配してくれて。」
「ううん、ごめんね。
言うか迷ったんだけど…」
「言ってくれてよかった。
じゃあ、行ってくるね、生徒会室。」
先輩、彼女がいたのに…
思わせぶり、辞めてください…
そんなこと言っても、期待したのは私。
先輩は悪くない。
「それでは、今日はこれで。
あとは各自、よろしくお願いします。」
最初のミーティングが終わって、会員それぞれの作業が始まる。
自由解散だから、終わった人から帰っていく。
だいたい最後まで残ってるのは会計。
特に先輩と私。
「そろそろ帰るかー。」
今日で、終わりにする。
ちゃんと言わなきゃ。
もう送らなくていいって。
「あのっ…」
「じゃ、俺これ出してくるからまた下駄箱で。」
私が口を開いたと同時に先輩はそう言って生徒会室を出てってしまった。
…。
先、帰ろうかな。
でもそれじゃ、明日も同じ流れになっちゃう。
ちゃんと、言わなきゃ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!