「おぉーい…あなたーっ戻ってこーいっ」
「えっあ、ごめん…」
「どーした?」
「いや、好きってなんだろうなぁーと…」
恋なんて経験したことない。
早く知りたい。
好きってどんな感覚?
「好きっていうのは〜…
こう、大勢の中にいてもその人をすぐ見つけられるし、その人のことばっかり見ちゃうし、かっこいいなぁーって思ったり、近づきたいなーって思ったり…そういう感じ!」
「あと、緊張しちゃうよね、話してると。」
「もっと知りたいし、もっと知ってもらいたい、とか?」
「そんな感じ!」
すぐ、見つけられる…
緊張…
知りたい、知ってもらいたい…
「なーに、恋でもした?
一ノ瀬先輩にっ?」
「んもー、そんなんじゃないよっ!!」
口ではそう言ってみたけど…
私、もしかして…
一ノ瀬先輩のこと…?
でも、たった1回ぶつかっただけで…?
「とりあえず、ご飯食べよーっ」
ふとバスケのゴールを見る。
「!」
先輩…こっち、、
目が合った?
一瞬だけど、視線がぶつかったような気がした。
気のせいかもしれないけど。
勘違いかもしれないけど。
そんな気がした。
何を見てたのかな。
きっと私のことは見てないだろうけど。
「す、き…」
とは。
家に帰ってからベッドに寝転がって検索してみる。
私の、この感情は…?
・いつも相手のことを考えている。
いつも…
一ノ瀬先輩のことが、ずっと頭の中をぐるぐる回っている。
今何してるのかなとか、どんな映画が好きなのかなとか…
彼女は…いるのかな…とか…
って、また考えたら顔がっ…
次っ!
・一緒にいたいと思う。
確かに、私、もっと近づきたいなーとか、思ってるかもしれない…
あとは…?
・考えただけでドキドキしている。
ドキドキ…
ドキドキって、なんだろう。
胸の高鳴り。
鼓動が速く…
ぶつかった時。
見つけた時。
考えてる時。
全部全部、そうだ。
胸が痛くなって、心臓が大きく、速く波打って…
どうしよう…
私…
一ノ瀬先輩のことが、好き。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!