夏休みも、生徒会は忙しかった。
何度も学校に行って、その度に何度も先輩と顔を合わせた。
だけど、前と違う。
嬉しさより切なさが勝る。
それに前より話さなくなった。
目は合うけど、私が逸らしてしまう。
先輩も、なんだか困った顔で。
先輩との距離感が、分からない。
文化祭当日。
「玲奈っ、次どこいく?」
「えー、お化け屋敷とかっ?」
「やだーっ!」
シフトを一緒にしてもらった私たち4人。
だからみんなで一緒に回れる。
複雑…
あーぁ…
先輩と…回れたら…
またそんなことを考えてる自分がいる。
「あなた…いいの?」
「へっ、何が?
いいよ全然、私は、お化け屋敷で。」
「って、違うよー!
どこ行くかじゃなくて、一ノ瀬先輩のこと!」
優梨ちゃんが私の顔を覗き込む。
「いいって、だって彼女いるって…」
もう、どうしようもないじゃん…
「でも、自分の気持ちは、伝えなくていいの?
このまま何もしなくていいの?」
自分の気持ちを…伝える…
「そんな、振られるってわかってて無理だよ…」
私、そんなにメンタル強くない…
振られる覚悟なんてないもん…
絶対先輩の目の前で泣いちゃうもん…
「どうせ一ノ瀬先輩も今年卒業だよ?
文化祭が終われば先輩たちは自由登校、生徒会も引退だし、会う機会少なくなるよ?
このままフェードアウトしていいの?」
「…」
そんなこと…言われても…
「私はあなたに後悔して欲しくないよ…」
後悔…
優梨ちゃんの言葉が頭に残ったまま、文化祭は3日目が終わり、いよいよ後夜祭。
後夜祭って告白する人が多いんだよね…
告白…かぁ…
無理だよ、私には。
無理無理…。
「あれ、一ノ瀬先輩は…?」
文化祭が終わって1週間は穏やかに時間が過ぎていた。
会計の仕事もそろそろ終わり。
3年生の自由登校…来週からだったような…?
「あ、いたいた!」
生徒会室のドアの前に立っていると、3年生の教室の方から走ってくる生徒。
って、片桐先輩!?
「っはぁ、君があなたちゃん?」
え、わ、私!?
「はい…そうですけど…」
「ちょっと来て!!」
腕をぐいっと引っ張られ、そのまま外へ。
「あの!これはどういう…」
い、意味がわからないのですが…!?
「とりあえず乗って!
話は車の中で!」
車の後部座席に乗せられ、隣に片桐先輩。
怪しすぎるんですが…どういう状況…!?
「あの…」
「突然だけど、落ち着いて聞いて欲しい。」
「…?」
「侑生は今、危篤状態だ。」
「…え?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。