「ありがとっ!
そう言えば、みんなカレシとかいないの?」
優梨ちゃんが目をキラキラさせて聞いた。
「私はー、付き合ってもうすぐ3年になるかな。」
と、玲奈ちゃん。
「え、玲奈が!?
意外!
恋愛とか興味無いかと思った!」
優梨ちゃんの言葉に玲奈ちゃんは笑いながら返した。
「よく言われる〜
私も、告られた時は全然興味なかったから〜」
「へぇ〜…
葵は?」
「私は最近別れたばっかり〜…」
すごいなぁ…
みんな、付き合ったこととかあるんだ…
3人が大人に見えてきた…
「あなたは?」
「えっ…」
わ、私…は…
「いないよ…」
なんか、急に恥ずかしい…。
みんなはもう色々なことを経験して、恋がどんなものなのか知ってる。
それに比べて私は…
「そっかぁ〜
じゃあ、中学の時は!?」
「いなかった…
あの…私、ね…カレシいた事ないの…
好きな人も…」
私は俯きながら言った。
カレシが欲しくなかったわけじゃない。
恋愛に興味がなかったわけじゃない。
告白してくれる人も、何人かはいた。
でも、“付き合う”ってどういう事なのか分からなくて。
好きって気持ちも、いまいちよく分からなくて。
ケーキが好きとか可愛いものが好きとか、そういう“好き”とは違うって分かってる。
でも、ドキドキとかキュンっていうのは分からなくて。
そんな気持ちのまま付き合うのは申し訳なくて、全部断わった。
少女マンガは好きだから色々読んでみてるけど、マンガみたいな出会いは現実には転がっていない。
私、感覚がおかしいのかな?
恋をすると可愛くなるって何かで読んだ。
みんなキラキラ輝いてる。
私だけ、知らない。
私だけ、暗闇にいる。
こんな私、やだな…
「じゃ、これから楽しみだねっ!」
「え?」
ぱっと顔を上げると、優梨ちゃんがニコッと笑った。
「あなたにはこれから恋を知るって楽しみがあるじゃん。
いいなー、戻りたー…」
「高校生にもなって初恋がまだって、変じゃない…かな?」
「えぇー、全然変じゃないよっ?
私のお姉ちゃんも、初恋は高校2年生の時って言ってたから。」
葵ちゃんもそう言って微笑む。
そ、うなんだ…
心がじんわり温かくなった。
「これから好きな人できるの、楽しみだねっ」
「うんっ」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。