第3話

同級生2
1,691
2019/07/10 08:16

🐰

______









__次の日 昼休み__






み「はらへったよーー」

じ「重い!」


脱力して体重をかけてくるみやを支えながら
そのままずるずると教室を出ようとして

寺島のいる
派手なグループの1人とぶつかってしまった

運動神経の良いみやが反射的に俺から離れたのと同時に、少し体格の良い男子とぶつかってしまった貧弱な俺は 簡単にその場に尻もちをつく。

じ「__~っ!」

み「じん!大丈夫?」

腰に痛みが走って すぐに立ち上がれなかった


「うわ、ごめん藤枝!大丈夫!?ごめん!」


すぐに謝ってくれている、これまた派手な髪色をした男子を見上げると

そのすぐ隣から
長い腕が伸びて
大きな手のひらが差し出された。







じ「__...!」






「大丈夫?」







紛れもない
寺島の手と 声。






突然のことに動揺して一気に顔に熱が集まる。

恥ずかしさのあまり視線を外して
差し出された手は掴まずに
痛みを押さえつけながら自力で立ち上がった



じ「だ、大丈夫...」


幸い、長い前髪のおかげで
下を向いていれば表情は見えていないだろう。


テ「ほんと?ごめんな、俺らがふざけててこいつも周り見えてなかったんだわ」


俺とぶつかった男子の額をぺちんと叩いて
いつもの優しい顔で笑う。


「いって!反省してるって!藤枝ゆるして!」


そんな反応を見て
またケラケラ笑う彼。




...笑ってる、寺島が 俺に笑いかけてる。



なんか話さなきゃ!チャンスじゃん!
こういう時くらいちゃんと喋ってくれ俺!
落ち着けー落ち着けー
平常心!!



じ「...大丈夫だよ、気にしないで」




__やば、ちょっと声震えてないかな

大丈夫かな





テ「...ん、それならよかった!」




それだけ交わし
また大勢の会話に戻った。











っはーーーーー

緊張した....







み「よかったじゃん、ちょっと話せて」


教室を出て
にやにやしながら小突いてくるみや。


じ「...話したって言えるレベルかな...」



まあ、会話は少ない方がいい。

ほんとはいっぱい話してみたいけど

いつ気持ちがバレるか恐ろしくて、そんなリスクは負えない。



...悔しいけど つらいけど

このくらいの距離が1番良いんだ。



ズキズキ痛む腰と
話せたことへの嬉しい気持ちと
少し切ない気持ちを押し殺そうと
俯いて歩いていると

後ろから肩を掴まれて顔をあげて振り返る









テ「藤枝!」





慌てた様子の寺島が俺の肩に触れていた。



じ「え、な、なななななに...っ?」



み「...あー、俺ちょっと急いでるから先行くね~!」



速攻で居なくなってしまうみや。




みやーーー!いやありがとうか微妙だよ!俺話すの下手なのにーー!




表情は崩さないまま
内心で百面相の如く焦っていると

寺島が小さな校章を差し出してきた



テ「ぶつかったとき落としてた!」


笑顔で差し出してくれたそれを
緊張しながらも 小さな声でありがとうと振り絞りながら受け取ると

俺より頭一つ分以上背の高い寺島が少し屈んで俺の顔を覗き込む。



端正な顔の近さに
もう心臓はとっくに爆発していた。



テ「...藤枝、どっか痛いだろ」


じ「っへ?」


予想もしていなかった指摘に驚いていると

そのまま腕を掴まれて「いくよ」って
保健室の方に引っ張られた






じ「え、え、??」

テ「なんか歩いてく時違和感あったから、どっか痛めてんのかなーって」

じ「...!」




これは
俺が教室を出ていく時
寺島がこっちを見てたってことになる

...うれしい。
好きな人の視界に 少しでも
その人の意思で入ることが出来ていたのが
こんなにうれしいなんて。









そのまま掴まれた腕が火傷するんじゃないかと思うくらい熱い気がして
心臓もばくばくうるさいまま
保健室まで引っ張られて来てしまった。


先生もお昼で不在の保健室は俺と寺島の2人っきりで、
いつもの薬品の香りもわからないほどの緊張が襲ってくる



テ「やっぱ先生居なかったかー、ほら、藤枝座って」


椅子を引いてくれたところに大人しく腰掛ける。


...痛い。




テ「んで、どこ痛いの?」

じ「...こ、腰辺り...?」


遠慮がちに答えると
寺島が少し笑った

テ「なんで質問に質問で返してんだよ!w」




もーーー!やだこの人!
かっこよすぎんだろ!やめてくれ!



テ「腰のどの辺?制服まくっていい?」

じ「ぇ、ちょ、寺島っ」

テ「痣できてるかもじゃん」


緊張やらなんやらで全く抵抗出来ずただ固まっている俺の制服の裾がすぐに掴まれ
シャツとカーディガンを一緒に捲りあげられる

先生の居ない保健室は少し寒くて
冷たい冷気がお腹を掠めた


寺島が俺の後ろにしゃがんで
「あ」と短い声を出す


テ「ここ、赤いよ?痣になるかも...」


大きくて あたたかい手が
右腰にそっと触れて

少し擦りながら 痛い?って問いかけられて


もう
何が何だか。


ああ、やばい、やばい。

心臓どうにかなりそう。


どうしよう、

声も出ない。

胸が締め付けられたみたいな甘い痛み。


どうしよう。


こんな気持ちになるんだ、

好きな人に触れられると

こんなに人間おかしくなるんだ。






何も言えずにただ固まって
ただただ俯いていると

心配そうに俺の目の前にしゃがむ寺島。



テ「え、やば、痛かった?ごめん大丈夫?」


焦りながら顔を覗かれる


テ「...藤枝?」


ほんとに 何か詰まってるんじゃないかと言う程声が出なくて

どきどきして


寺島が 俺の髪に触れて

長い前髪をそっと横に流された




テ「......なに その顔」









____ああ

終わった。



真っ赤であろう顔を見られて

つい涙が出そうになる


寺島の顔が見れなくて

視線はずっと地面に落としていた。



ずっと噤んでいた口を
どうにか少し開く




じ「...__ご めん...」




掠れたような小声でそう呟く。


気持ちが
ばれてしまったかもしれない。

男からの好意で
もうこの人から嫌われてしまうかもしれない。




次に寺島が発する言葉が怖くて

どんな罵詈雑言か

冷たい視線か

恐ろしくて

でも嫌われたくなくて

溢れそうになる涙をぎゅっと堪えたけど

瞳に溜まった水分で

視界がゆらゆら滲む。




肩を竦めて震えていると



寺島が俺の頬に手を置いた





優しく

優しく



大切にするみたいに

指先で頬を撫でられる
















テ「...藤枝、それ、期待していいの?」











じ「__ぇ?」











どういう意味
と 口にしようとした瞬間


立ち上がった寺島が
俺の頭を引き寄せて

抱きしめた。





優しい柔軟剤の香りが脳を侵す。







我慢していた涙が

ぼろぼろ溢れた。









じ「...な、なんっ....」



テ「ねえ、俺のこと 好きなの?」










抱き寄せられたままそんなことを言われて


理解が追いつかないまま

少し混乱しつつも



小さく頷く。






じ「.......ごめん、...」

グズグズと鼻を啜りながら謝ると

少し体を離されて


真剣な寺島の目が 俺を捉えて
じっと見つめられる。


我慢できないようにふふって少し笑う彼が

もう一度俺の頬に手を置いて

至近距離で見つめ合う。


目が

逸らせなかった。





テ「ねえ、藤枝。
俺 藤枝のこと 好きなんだけど」










うそ










テ「恋愛対象って ことなんだけど」











...うそ、










涙が止まらなくて





信じられなくて





夢みたいで






寺島をみつめたまま




また小さく声を漏らした








じ「...おれ、寺島の 恋人になれるの...?」







テ「なってくれるの?」







涙を一度拭って



頷いた。









じ「...夢じゃ ない?」





テ「夢でたまるか」







ふわっと笑って

寺島の唇が 俺の唇に

触れた。



触れるだけの

優しいキス。










テ「...よろしくね」









にっこり微笑まれて


俺は


まだ
夢じゃないかなあなんて

ぼんやり考えていた。













→続く


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