第6話

6話
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2018/03/20 11:24
涼太side

「あの…つぼみさん…?」

「………。」

返事は返ってこなかった。

2人が帰った家はとても広く感じる。

「つぼみさん…そろそろ離して〜?」

やばい、ずっとあぐらだったせいで足が痺れてきた。

蕾はここ数十分、俺のお腹に腕を回したまま離れようとしない。

腰より少し上ら辺にひたいが押し付けられてグリグリされる。

「あの…」

「バカ」

「蕾」

「あほ」

「ごめんね」

「クズ」

う、うーん…

俺への悪口しか返ってこないなぁ

最後のは否定しないけど。

「ほんとごめん…やりすぎたと思ってる。許して…?」

あとで透と春にも言っとかないとな。

『ごめん、ありがとう』って。

すごい演技力だったみたいだし。

「…ほんとにいなくなったかと思った」

続けてボソッと蕾が言った。

「…よかった」

頭を撫でようと伸ばした手を戻す。

自分の立場を理解していたはずだったのに、気が緩むと忘れてしまう。

「俺は蕾の【幼馴染】でしょ?勝手にいなくなるわけないじゃん」

俺は笑顔で言った。

そしたら蕾もふっと笑って起き上がり、真正面に来た。

「だよね!ほんと心配したんだから、私の【幼馴染】は涼太だけなんだし」

急に元気になったことと、抱きついていたせいで崩れてしまった前髪を見たことで、思わず笑ってしまう。

すると蕾は少し拗ねたように言った。

「何笑ってるの?だいたい悪いのはそっちだから。言っとくけどまだ許してないからね」

これくらいはいいよね

そう自分に言い聞かせて蕾の前髪をそっと直した。

「うん、ごめんね」

【幼馴染】

幼馴染…か……

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