第8話
8話
それから俺は記憶をなくす度に、蕾に告白した。
付き合って、忘れられて、告白して…
そんなことを繰り返していった。
大学に入って、たまに蕾の精神状態が不安定になる時があった。
たぶん記憶喪失を繰り返しているせいだろうということで、蕾が苦しそうな時は、俺たちはそっと見守った。
そんな日々を繰り返しているうちに、俺はどんどん怖くなった。
蕾に忘れられることが、怖くなって、悲しくて。
耐えられなかった。
「なあ、透、春。」
もう、限界なのかもしれない。
「辛い、」
蕾が苦しんでるのだって、俺と恋人になったからだ。
俺さえ消えれば、難なく終わるじゃないか。
そんなバカみたいな考えを振り絞って、2人に頼んだ。
さあ、蕾を忘れられるように頑張ろう。
そう、思ったはずだったのにな…
『また涼太を好きになる』
あの言葉がどうしても頭から離れなくて、心の奥底にこびりついてしまって。
離れなかった。